そばをひと箸つまんで、ちょこんとつゆにつけて、つつーーっつと手繰り込む。至福の一時だ。

ところで、どういうソバが旨いかというと、これがなかなか奥深いのである。私が講師を務める築地の教室は、開業総合科というプロ養成の生粉打ちの講義で、粉も水の量も全く同じにして、生徒さんたち全員と、私が打った生粉打ちのソバを一堂に並べて試食をする。

築地の開業総合科のカリキュラムは、三日目に生粉打ちを体験するのだが、大抵の生徒さんは三日めにはすでに細くて様子のいいそばを打っている。

ところが、これらのそばは、遠目にはさほど変わらなくとも、それぞれのザルの売行きがずいぶん違ってしまうのが、面白い。




売行きがよいソバは、これらの中で一番濃い色をしており、ひと箸手繰ると、次をまた手繰りたくなる。売行きがのびないソバは、食感が少々粉っぽくて、箸でつまみあげた姿がゴワゴワとしている。

その差は、粉と水を出会わせる「水回し」という作業で決まりがついているというわけなのであるが、水回しを体得するには、2-3週間にわたってくる日もくる日もそばを打ち続けるのが効果的だ。

そば打ちにおいて、カタチを整えるステップは比較的やさしい、しかし、次に食感を高めていくステップに進むと、その技術の向上には、終わりがない。この奥深さが、たまらなく人を魅了するのである。

この画像は、1.4mm角に仕上げた生粉打ちのアップである。いいそばは、大抵角がキリリと立っている。こういう姿の生粉打ちを手繰って、なめらかな喉ごしを感じたら、そのソバは完璧な水回しが施されているということになる。

ふらりと入った蕎麦屋さんで、こんなソバに出会えたり、自分で打った蕎麦がこういう風に仕上がると、その日一日がハッピーになる。

▼参考記事:そばの切り方、いろいろ
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