浅草の味、ふたたび
▲ここに佇むだけで懐かしい、門前町の類型 |
浅草は、華やかな東京喜劇の黎明とともに栄え、東洋一の歓楽街へと発展していったのである。そして、2004年も暮れようとしているいま、浅草には郷愁のデジャビュがある。
それは、なぜか。
▲この小ささ、レトロさが、キッチュ感覚(ださかわい系)にお洒落 |
でも、いまは地方都市のデザインはこぞってリニューワルしてしまい。それぞれの個性が花開く時代となった。
その結果、かつては繁華街の権化であった浅草が、往年のデザインのままに取り残されることになった。それが哀しくも懐かしい、不思議な魅力を提供している。
世界の国々から観光客が押し寄せる浅草寺門前の仲見世。東洋のコニーアイランドとでも呼びたい、貸切ができる小遊園地「花やしき」。江戸趣味の粋な小物を並べている店々。昔にタイムスリップしたような時空間旅行の気分が、楽しめる。
そう、浅草はいまふたたび、「いい味」を出しているのである。
それでは、この愛すべき浅草に繰り出してみよう。
並木通りを目指す
▲浅草のシンボルといえばここである |
で、意外に面白いのが都営浅草線。來る電車ごとに行き先も、車両も、止まる駅も、もうメチャクチャで、「坩堝」という表現がぴったりくるアナーキーな路線。二つの空港を結んでいる路線としても機能しており、東京の交通網の皺がみんなここに寄せ集められているような感じなのだ。
この日は、総クロスシートの京浜急行の電車が乗り入れていた。なんだか、遠い異空間へ旅立つような気分になった。
都営地下鉄の浅草駅は、深い地層の下にあり、長い階段を上り詰めて地上に出てくるという体脂肪過多の都会派人間に配慮した健康設計となっている。いちばん蔵前よりの出口を使うと、めざす並木通りまでは目と鼻である。
本日訪れるのは、「並木の藪蕎麦」である。アイストップに雷門を望むという浅草中の浅草というロケーションに、昔ながらの佇まいを見せている。