23日目のコーヒー豆が一番おいしい!
目の前で、こともなげに、一瞬にして描きあげられる繊細なラテアート。一連の流れるような動作を身につけるまでに、いったい何千杯のドリンクが作られてきたのでしょう。「実は、僕の方法では、どうしても作業台にコーヒーの粉がこぼれてしまうんです。大会では減点の対象になるのですが、それでもおいしさを優先したかった。決勝では味に照準を合わせた評価方法で採点してもらえたのだと思います」
決勝戦の前に、出場者たちはシアトルの練習会場で準備期間が与えられ、本番で使われるエスプレッソマシンと水を用いて練習をすることができます。
「2日間練習をしたのですが、その時点ではまだ自分の思い通りの味ができていませんでした。ガスが入った、にごった味に感じられました。本番で思い通りの味が出せたのは、それがちょうどコーヒー豆を焙煎してから23日目にあたったからだと思います」
エスプレッソ用の豆は、焙煎してから23日後が一番おいしくなると、洋之さんは豊富な経験に基づく持論を抱いています。豆の中のガスがちょうどいい具合に抜けて、きれいな味になるのだと。コーヒーの場合は、焙煎してから2週間以内が賞味期限と言われていますが…?
「コーヒーの場合は時間をかけてドリップしますから、ドリップの間にガスが抜けますが、エスプレッソは瞬間的に抽出するので、ガスがそのまま味の中に入ってしまいます」
なるほど! 聞くほどに精妙で奥深く思われるエスプレッソの世界。洋之さんはどのようにバリスタ修行をなさったのでしょうか。