フレンチスタイルの珈琲屋とはなにか

カウンター。

長年にわたり多数の客人を迎えてきた艶やかなカウンター。

1982年に開店し、30年近い歴史を歩んできたCafe螢明舎。そのスタイルの源流は原宿の名店アンセーニュ・ダングルや、かつて渋谷に完成度の高い店舗を有したレジュ・グルニエ(現在は青山店のみ)にあります。

Cafe螢明舎のオーナー、下田荘一郎さんは全盛期のレジュ・グルニエで修業した後、まず習志野市・谷津に、ついで市川市・八幡に自らデザインしたカフェをオープン。八幡店は写真家の故・星野道夫が愛したカフェとしても知られています。

「当店はフレンチスタイルの珈琲屋です」と下田さん。

その「フレンチスタイル」の意味するところを、最初、私には明瞭にとらえることができませんでした。フレンチスタイルと聞けば、多くの人がオー・バカナルに代表されるパリ直輸入のオープンカフェを連想するはず。けれども80年代、その言葉は明らかに異なる様式を意味していたようで、下田さんにお話をうかがって初めて了解することができたのです。

従来の喫茶店を超えて、最良の一杯を

銅製のイブリック

銅製のイブリックはフォルムも美しく。

70年代は喫茶店の大ブーム。「出店すれば必ず儲かる」「こんなラクな商売はない」という神話のもとに、会社生活に嫌気がさした人々が喫茶店経営に乗り出した時代。少数ながら真剣に珈琲と空間づくりに取り組む喫茶店がある一方で、大半の喫茶店は安直な姿勢だったようです。珈琲の味のレベルも推して知るべし。

やがてそんな風潮に反旗を翻し、手間ひまかけた最良の珈琲、最良の寛ぎの空間を提案する喫茶店が出現しはじめます。

当時の一般的な喫茶店にはない、苦味とコクの豊かなフレンチローストのエイジング・ビーンズ。フランス発祥のネルを使ったハンドドリップ。フランスの一軒家を模した、高級感のある重厚な空間づくり。それらは当時、訪れる人々にどれほどのインパクトと感動を与えたことでしょう。

その先駆者だったのがアンセーニュ・ダングル、ついで登場したレジュ・グルニエでした。一世を風靡したそれらのお店の流れを汲むスタイルを「フレンチスタイルの珈琲屋」と下田さんは表現するのです。

ランプ

夕暮れどきはランプが生みだす陰影も魅力のひとつ。