城とステンドグラス

「うちの家族が持ってる城をさ、コンサートなんかに貸していたんだ」し、城??「そう。でもね、おれはもっとクリエイティブな仕事をしたかった。で、ステンドグラス作りを3年やって」す、ステンドグラス???「そう。で自分の工房を持ったんだけど、これも違った。2ヶ月で閉めたよ」 —いやはや、波乱万丈である。

まだ暑い時分。といっても業界関係者向けセミナーにTシャツでやってくる。凡人だったら落ち着かないだろうが、さすが鬼才、それが様になっているから大したものだ。堂々と自分のワインを語り、質問に答え、写真撮影もこなしたその後、疲れているだろうから短時間でも…と頼んだインタビューで、さらにたっぷり2時間語ってくれた。独特のざっくばらんな口調が、たまらなく痛快である。

色合いは緑がかっている。爽やかだがコクのある味わいの白

ビービー・グラーツ。この日ちょうど39歳になったというこの男、世界中に知れ渡るワインを造っている。分かりやすく言えば、2000年からワインを造り始め、2003年にフランスはボルドーで2年おきに開かれる世界最大級のワイン展示会ヴィネクスポで、ブラインドテイスティング1位のワインを造ったのだ。味だけで先入観なしの勝負だから、実力ナンバーワンである。

「初めて行ったんだよ、ヴィネクスポは。名刺代わりに自分のワインを持って行ってね。どうだい、目隠しで審査するから出してみないか?って言われて、ハイハイって1本出してさ。それで忘れてたら、後で電話が掛かってきて『おい、1位だよ!』って。嬉しかったな」 ワインガイド本の『ヴェロネッリ』など、メディアも最高ランクの評価を与えた。

クレイジーだ!

彼のトップワイン『テスタマッタ』の名前には、クレイジーなという意味合いがある。「専門家は口をそろえて言ったね。『お前はクレイジーだ!』って。この土地じゃここ100年も、ちゃんとしたワインなんか造ったものはいなかったのさ」

自らのワインを語るグラーツ。この男は意志を貫くタイプだ。

無謀な賭けのようだが、彼はうまく行くと直感していた。家族の城のそばに2.5ヘクタールの畑があり、幼い頃から収穫とワイン造り、その時のパーティーは生活の大切な一部だった。トスカーナの中ではごく普通の風土だが、土の保水性はちょうど良い。ここで最高のワインを造るのは、彼にとっては当たり前のことだった。

キャンティ・クラッシコの古樹から『イル・カルボナイオーネ』という銘酒を造り評価を得ていたポッジョ・スカレッティ社のユーリ・フィオレンティーニに出会って自信を得た。家族の畑を含めた15ヘクタールを借りて数人のスタッフを雇い、自分のやり方でブドウを作ることにした。そのやり方と言うのは…


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