狭山在来種だから無農薬の紅茶がつくられる

狭山 在来種を使って紅茶が作られる
埼玉県で無農薬、有機栽培で作られる純国産紅茶の“狭山野紅茶”を製造されている増岡園さんを訪問しました。5年前から紅茶を作り始め、試行錯誤の上に無農薬、有機栽培の“狭山野紅茶”が完成したそうです。

増岡園では茶葉は狭山の在来種を栽培して、30年間にわたり無農薬で茶を生産しています。年月を経て生き残った害虫に強い品種であるから、農薬を使わずに茶を栽培することが出来ると教えてくださいました。


国産紅茶のたどった道


国産紅茶の味をご紹介する前に、あまり知られていない国産紅茶の歴史について簡単に触れておきましょう。

国産紅茶の歴史は明治時代に始まります。明治政府は1874年(明治7年)に「紅茶製法書」を製作し、紅茶製造にとりかかります。当時、インドで作られる紅茶がイギリス市場を独占する勢いで、世界では紅茶へと需要が移行しているのは確実な状況でした。明治政府は国内目的ではなく、外国への主要輸出品目として紅茶の製造をスタートさせたのです。

しかし、それまで国内での紅茶についての知識もなかったために、試作品の質は悪く、失敗の連続でした。劣悪な紅茶製造を成功に導くことに貢献したのが多田元吉です。多田元吉は1876年(明治8年)、政府によってインドへ紅茶製造を習得するために派遣されました。翌年帰国して、日本各地に紅茶伝習所を開設し、インドから持ち帰ったアッサム種を栽培します。

1880年代には国産紅茶が世界市場で売れ始める気配があったものの、インド茶に加え、1880年代にはセイロン茶の生産が急速に拡大していた。1937年頃と1955年頃、国産紅茶の生産が最盛期を迎えたが、1971年の紅茶輸入完全自由化によって、国産紅茶はほぼ生産を終えることになってしまった。

かつての国産紅茶は主として国外向けであったならば、近年生産されている国産紅茶は国内向けであることが特徴的です。無農薬有機栽培で作られている紅茶も多く、また各生産者の強い思い入れによって生まれた国産紅茶は、生産者、生産場所、種などで風味の異なったものが出来上がっているようです。健康ブームにのって国産紅茶の人気は静かながらも着実に受け入れられていることでしょう。

ストレートでこそおいしい紅茶

狭山茶がたっぷり使われた羊羹のなかに餡が入っています  さやまの紅茶をストレートで一緒に味わうのがオススメです
さて、さやまの紅茶の話に戻りましょう。お話を伺いながら自慢の紅茶を入れていただきました。香りはセイロンを思わせるのですが、味はどの紅茶に似ているともいいがたく、渋みが少ないためにストレートでこそおいしい紅茶だといえます。

そうはいっても紅茶だから、自宅ではミルクを入れて実験しましたら、水っぽい味になってしまいました。砂糖は好みで入れてもいいようです。ミルクに含まれるカゼインという成分が紅茶の渋みをまろやかにしてくれていることからすれば、渋みの少ないこの紅茶にミルクは合わないと考えるのが妥当だということでしょう。

さやまの紅茶 50g 525円 茶葉には旨み成分がしっかり蓄えられているのでほんのり甘い
この紅茶は和菓子と相性が良いそうです。店内には「狭山茶ようかん」も販売されており、緑茶をたっぷり使った羊羹で中には餡が入っています。
全体として国産紅茶の多くが緑茶用の品種を利用しているそうです。
まだ、国産紅茶を試してないならば、セイロンやインドや中国の紅茶とは違うものだと認識したうえで、独特の国産紅茶としての狭山野紅茶を味わっていただきたいです。


【関連サイト】
狭山野紅茶が購入できます 増岡園

※国産紅茶については角山 榮先生の『茶の世界史』の第2部を参考にしています。