以前から気にはなっていたがなかなか訪れる機会のなかった「コバヤシ」。どうもフレンチというと恵比寿や青山、銀座といったところを想像してしまう。しかし調べてみるとそれぞれの街にしっかり根を張るレストランが意外に多いことに気づく。

私がコバヤシを訪れるきっかけになったのは、食事会で知り合った友人から、私の知っているサービススタッフがコバヤシで働いているということを聞いたことにある。彼の名は阿部さん。彼とは専門学校を出たての頃、恵比寿のラブレーで何度かお会いしたことがあった。サービスマンとしてのセンスを感じさせるも、ちょっと荒削りなところもあった彼だが、その後西麻布のジョージアンクラブを経てコバヤシに移ったのはもうずいぶん前らしい。久しぶりに彼に会うのはとても楽しみであった。

コバヤシは駅から歩いてほんの数分のところにある。この辺りにフレンチレストランがあるなんて、きっとご近所の人しか知らないだろう。駅周辺は居酒屋、パチンコ屋や昔ながらの喫茶店が並ぶ。恵比寿や表参道の雰囲気とはちょうど正反対だが、なんとなく気持が落ち着くのは何故だろう。駅周辺に生活感が漂い、歩く人のペースが比較的ゆっくりと感じるからだろうか。

ゆっくりとメニューやワインリストでも見ようと思い、待ち合わせの時間より30分も早く店に着いた。すっかり大人になった阿部氏と昔話に花が咲いたが、さすがにすっかりサービスマンとして成長していたことはとても嬉しいものだ。

さて、そのコバヤシのメニューは4500円コースと6500円コースに加え、シェフのお任せコースもある。もちろんアラカルトも。コースはものにより追加料金がかかるものがある。また、「当店の野菜たちは産地の農家から送って頂いております。」とあり、単に共同市場から仕入れているのではないとちょっとしたこだわりを感じる。今回は初めてということもあり、予算を言ってお任せで作ってもらうことにした。3人のメニューは次の通り。

前菜
・フォアグラとイチジクのミルフィーユ仕立て
・蝦夷鹿の赤ワイン漬けカルパッチョ仕立て、フランス産マッシュルーム仕立て(上の写真)
・北海道産桜マスのジュレのテリーヌ、ディル風味、きゅうりのサラダ
・ブルターニュ産オマール海老の燻製、パスタ仕立て

メイン
・和牛ほほ肉の赤ワインブレゼ煮込み
・ウサギのもも肉とセロリのブレゼ、蒸し煮(下の写真)

小林シェフはまだ若いが非常に研究熱心で、質の高い素材を見事な「料理」に変身させる技を、数多く持っているという印象だ。盛付、つまり見せ方というより量、つまりボリューム感にこだわりが見られる。一見繊細に見える一皿でも、食べ終わると結構な力強さを感じるものが多い。野球で言うと往年の江川卓が高めで三振を取った、伸びのあるストレートといったところか(ちょっと古い?)。「和牛ほほ肉の赤ワインブレゼ煮込み」は肉の煮込み具合、赤ワインの風味、そして十分な量とあわせてそれはダイナミックな一皿だ。

いや、参った。平井にこんなうまい料理を出す店があったか!という驚きと満足感でいっぱいだ。東京中、いや全国からグルメが集まるのもよくわかる。阿部氏の頃合を見計らったサービスもソツがない。もともと個性的な方なので、持ち味を十分に出してサービスの道を極めて欲しい。顔見知りではあったが、知らなくても十分に楽しい時間を作り出してくれるだろう。


シェフの繰り出すダイナミックな料理の数々と個性的なサービスが幾十にも重なり合い、それを求める人達が集まる「コバヤシ」。これからも着実にマイペースで発展していくに違いない。遠くても足を伸ばす価値のあるお薦めの1軒である。

レストラン「コバヤシ」
江戸川区平井5-9-4
03(3619)3910
11:30-14:00/17:30-21:00/火休

場所:総武線平井駅北口の駅前広場から向かって左奥に西友ストアがある。西友の入り口の前の道を真っ直ぐ50m位行ったあたりでフランス国旗が目印。徒歩3分位。
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