「予約の取れないレストラン」。この平成大不況の中、不思議と結構あるものだ。最初は、何だそれ?なんて思っていた。ほんとかな?と思って何度か電話してもほんとに予約が取れない。2か月先もいっぱいだ。そうなると何としても行きたくなる。ダメ!と言われるとやりたくなる子供心と同じだ。
そこで台風が来た夕刻に電話を入れてみた。キャンセルが出たとのことでその日の1時間後に予約が取れた。その夜は台風が来ているにも関わらず満席。途中は省くが素晴らしい料理ともてなしの心を感じる、気持ちの良い時間であった。外は嵐でも中は天国とはまさにこのこと。
長い前フリだが、これは一昨年の夏の話。
それから1年半。レストランキノシタは昨年、初台から山手通りの内側、代々木3丁目に移転した。
フロアの席数は約30席。オープンキッチンは以前の店と同じだが、シェフとの距離が非常に近くなり、ライブ感はより一層高まった。メニューは3800円のコースと5000円のコース。その他にシェフのお任せコースもある。すべてにデザート、コーヒーがつく。内容により+300円~1000円程度の皿もある。
と言ったことより、友人3人と席に着いたときは素直に予約が取れたことにまず感謝してまずは乾杯!
前菜に選んだサーモンとポテトのソテーに降りかかった黒トリュフ。その量は半端ではない。中の料理がまったく見えないほどに降りかかった黒いダイヤモンドの破片からは、すさまじい官能的香りが漂う。(+1000円)
シーフードのスープも絶品。しっかりと溶け込んだ魚介類の味わいが幾重にも楽しめる。しかし、このスープを飲み干したところで、そろそろボリューム感を感じることになる。
主菜の白金豚のソテーは、肉汁がじっとりと染み込んだ逸品。歯ごたえも柔らかく豚もうまいぞ、とシェフの主張が聞こえるようだ。デザートも食事のラストを飾るにふさわしい、酔い加減をまろやかにしてくれる一皿であった。
フロアの真ん中に大きな8人掛けのテーブル席がある。サイズが大きいため向かい合わせになるとちょっと距離を感じてしまう。幸運にも予約が取れたならそのテーブルは避けたい旨伝えるべきだろう。
キノシタは単に予約が取れないとか、値段が安いとか、量が多いといった直接的な事実表現に加え、驚き、迫力、親近感といった感情的言葉もぜひ加えたい。フランス料理に関わるすべての面においてキノシタは以前の店より明らかに進化している。
味が濃いという声も聞く。しかし、濃い薄いは個人の好みの問題。シェフの塩の一振りが進化し続けるフランス料理の本質を語っていると言っては言いすぎだろうか。
レストラン キノシタ
住所:渋谷区代々木代々木3-37-1
代々木エステートビル1F
電話:03-3376-5336(従来通り)
金額:5000円のコース、4人で食前酒、5000円程度のワインを2本飲んで合計一人10000円程度。サービス料はない。
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