品数の多さで美食フィールドを広げる5皿のアミューズ。
器はすべて別々ですが、これでひとつのメニューです。これが、ガニェール氏のお料理の特徴。品数を多くし、いくつもの味わいを率いることで、目や舌に届ける美食のフィールドを大きく広げているのです。
味覚の交差点がコンパクトにまとめられたシャンティ。
ちょっと崩すのが忍びないですが、この中には、崩してこそ生まれるふんわりとシャッキリの味覚の交差点が、コンパクトにまとめられているのです。そして喉元を過ぎる頃、かすかに感じるパースニップ独特の苦味が、後味をきりっと引きしめます。
また、「マッシュルームのサラダ ピクルスのジュ 真鯛の薄切り」は、マッシュルームのピクルスをトマト風味に仕上げ、器の壁にペタっと真鯛のマリネを貼り付けたもの。
細切りにした生のマッシュルームの軽い歯ざわりが、トマトの酸味と甘味が出会うゆるやかなジュースの中に、とてもいいアクセントで残ります。
スプーンの上で食材同士のリレーが生み出す味のまとまり。
小さなスプーンでいただくと、トイボックスのように、いろんな味わいがかわるがわるやってきます。でもそれは決して忙しいわけではなく、食材同士が次々上手にバトンタッチし合っている感じ。受け渡しがスムーズなので、つまづくことなく口の中でひとつにまとまっていきます。
かのピカソが愛飲したリキュール仕立てのクリーム。
スーズとは、リンドウの根から作られたフランス原産のリキュール。一緒に口に入れると、トウモロコシの甘さに少しだけさざ波を立てるように、やさし目の薬草香が舞い降ります。
そして、クリームの中に白いマイクロトマトのように何粒か浮かべられたヤギのチーズが、鼻に抜ける独特の臭みを連れて、存在感を現します。私はヤギのチーズが苦手なので、あまり口の中に居座らせないよう早めに飲み込みましたが、お好きな方は味わいに新たなエッジが加わり、より楽しめることでしょう。ひと粒でも口の中の味がわっと変わるほどインパクトがあります。
貝類の上で日本酒が鮮烈な印象を残すソルベ。
次ページでは、4皿から構成される文句なしのスペシャリテ「野菜のコンポジション」をご紹介します!
【INDEX】
2ページ目:アミューズ
3ページ目:前菜「野菜のコンポジション」
4ページ目:メイン・ジビエ「蝦夷鹿」
5ページ目:デザート「柚子とフランボワーズ」