───ニンテンドーDSの“さわる”という新しさ、面白さを伝えるうえで、苦労などはありますか?
加藤: “さわる”という面白さを伝えるうえで、文章と写真を使って構成する紙媒体には、もちろん限界はありますが、紙媒体にしかできないこともあります。パッと見ただけで伝わるような内容ならテレビCMでも充分ですが、伝え手の気持ちをさらに深いレベルで伝えようと思ったら、整理整頓された情報を何度もくり返し読める紙媒体のほうが、やはり強い。ニンテンドーDSの場合はとくに、攻略記事などでは画面写真のどの場所をタッチしているのかを表記しつつも、画面のジャマになってはいけないので、その魅力を伝えるうえで工夫というか、苦労はしています(笑)。
───ゲームの面白さを伝えるメディアとして、インターネットの発展も著しいです。
加藤: インターネットは速報性が何よりの強みではありますが、情報が見やすく整理整頓されていなかったり、非公式な情報が飛び交っていたりと、デメリットもあります。ただ、インターネットはもはや日常生活には欠かせないものになりつつありますから、インターネットを利用している人たちにも「ファミ通を見ないと本当のことがわからないじゃん!」と言ってもらえるような記事作りをしなくてはいけない。雑誌とインターネットが連動する企画なども面白いですし、これからは僕たちもインターネットを有効に活用していく時代です。紙媒体だからこそ、ファミ通だからこそできることを、もっともっと追求していきます。
───インターネットの登場によって、紙媒体としてのファミ通に変化した点などはありますか?
加藤: 新作スクープにしても攻略にしても、その情報がすでにインターネットに載っている可能性があることを常に考えながら、雑誌を作らなければならなくなったことですね。当たり前の話ですが、ただ情報をそのまま載せるだけではなく、さまざまな見せ方や切り口を考えて、より活用性の高い情報に仕上げなくてはいけない。新作スクープなら、どこが新しくなったのか、どうして面白いのかをしっかり伝えなければいけない。攻略なら、ただデータなどを載せるだけではなく、それをどう活用すればより面白くなるのかを、伝え手が提案しないといけない、とかね。いずれにしても、僕たちの目を通っているからこそ、より価値があるというようなコンテンツ作りを、あらゆる記事に対してより強く心がけるようになりました。
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───今でこそゲーム雑誌の王道たるファミ通ですが、その始まりはどのようなものだったのですか?
加藤: 1986年に創刊された当時は「ファミコン通信」という名前でしたが、じつはファミコンの“専門誌”ではなく、面白いものなら何でも記事にする“総合誌”という発想で元々スタートしていたんです。ゲームとは直接関係なくても面白い題材があれば取材に出かけたり、カニが美味しいシーズンにはカニの食べ方を特集したりとか・・・これは極端な例ですが(笑)。
───ファミ通キューブ+アドバンスの水間編集長は、かつて当サイトのインタビューで「(ファミコン通信が成功した)一番の理由は、ユーザーのニーズに合わせて自分たちも変わることを全く恐れていなかったこと」とおっしゃっていました。
加藤: ファミ通という雑誌は、世の中の娯楽の変化に対応して常に進化してきた雑誌なんです。ソフトの発売ペースが上がってきたスーパーファミコン時代には、いち早く週刊化を実現しましたし、プレイステーション2の登場によってDVDが普及すると、映画の情報にもかなり力を入れるようになりました。
───これからもゲームは、ファミ通はどんどん変わっていきそうです。
加藤: 変わっていくのは「週刊ファミ通」だけに限った話ではありませんよ。最新ゲームの攻略情報を携帯電話で読める「ファミ通攻略館」や、FOMA901iシリーズのゲーム情報を取り扱う「ファミ通iモード」、昭和世代の大人に向けた総合情報誌「オトナファミ」などなど、ファミ通グループ全体で新しい試みをどんどん始めています。
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───ニンテンドーDSの開発の背景には、萩島さん曰く「複雑化したゲームという娯楽に多くの人が付き合いきれなくなっている現状を打破する」という、強い決意が込められています。
加藤: 僕たちゲーム産業のメディアは、任天堂さんのチャレンジの価値をものすごく理解できるし、高く評価しています。その魅力をより多くの人たちに伝えるお手伝いをしてきた立場としては、ニンテンドーDSが幅広い人たちに受け入れられている事実はとても嬉しいことです。新たなゲームファンをたくさん開拓することができれば、ゲーム産業全体にとっても素晴らしいことだと思いますし、最も重要なことだと思います。
───しばしば、日本のゲーム産業は縮小傾向にあると言われますが。
加藤: 見方を変えてみれば、決して市場規模が縮小しているわけではないんです。ゲームという娯楽が多様化している現在、ゲーム機のソフトとハードの出荷額だけでなく、携帯電話で遊ぶコンテンツや、オンラインゲームに支払う料金など、広い意味での“ゲーム”を捉えなければならないと思うんです。また、たとえ日本国内においては市場が縮小傾向にあるとしても、ゲームの先進国である日本から全世界へとビジネスを拡大している企業もどんどん増えています。ワールドワイドな視点で見れば、じつはゲームはかなりの成長産業だと思いますよ。日本はその中でトップを走っているわけですし。
───これまでのゲームファン以外の人たちにも遊んでほしいニンテンドーDS。全国のコンビニでも気軽に買えるファミ通という雑誌の果たす役割は大きいと思います!
加藤: 僕たちファミ通は、ゲームの面白さを知る入り口として、そしてゲームファンの相談相手になる雑誌として、ナンバーワンのゲーム雑誌を自負しています。だからこそ同時に、ファミ通が果たすべき責任は本当に重大です。ファミ通はなまじ成功して売れているだけに、それを大きく変えていくことは勇気が要ることですが、それが止まってしまったら雑誌としては死んだも同然です。ファミ通はこれからも、どんどん進化を続けていきます!
───いち読者としても、期待しています。今回はどうもありがとうございました!
【関連ページ】 |
・ファミ通.com |
・株式会社エンターブレイン |
※前回のインタビューもあわせてご覧ください! |
<目次> |
◆ニンテンドーDSの「キラータイトル」は 良い意味で“ゲーム”らしくない、アナログ感覚のコミュニケーションを実現! |
◆ゲームとともに、「ファミ通」は進化する! ニンテンドーDS、インターネット、娯楽の多様化・・・ファミ通はどうなる!? |