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欲しい人がいなければ売れない、ということ(2ページ目)

年末商戦を前にして発売された2つの新型携帯ゲームハード。PSP goとDSiLL。発売直後の売上げで、明暗がくっきりと分かれたようです。大きな差がついたその理由とは、いったい何なのでしょうか。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

PSP goにしかできないことが分からない

PSP go対PSP-3000の図
PSP goの価格はPSP-3000よりも1万円高い26,800円。かなり強い購入動機がなければ、PSP-3000の方が選ばれてしまいます。
DSiLLの1番の特徴が大きいことだとしたら、PSP goの1番の特徴はなんでしょうか。それは、オンライン専用機であるということでしょう。UMDドライブがなく、ゲームはオンラインに接続してダウンロード購入。メディアレスのゲームハードです。

PSP goが欲しくない理由というのは、わりとはっきりしていて、このUMDが使えないということがかなり大きいと思われます。お店でゲームを買いたい、今まで持っているUMDを引き続き使いたい、あるいはオンラインに接続できる環境がない、などが買わない理由になります。これはDSiLLの大きいと持ち運びに不便、に相当する部分で、商品の特徴を出すためにあえて手放しているところです。

ではこれがひるがえってPSP goを買う理由になるのか。ここに大きな問題があります。そもそも、オンラインでゲームをダウンロードするのはPSP goの専売特許ではありません。PSP-3000でもメモリースティックデュオにダウンロードすれば同じことができてしまいます。結果、PSP goが欲しい理由はかなりぼやけます。UMDも使えて、ダウンロード購入もできるPSP-3000に対して、はっきりとした優位性を打ち出すことができません。

少し面白いデータがありまして、PSP go発売週のPSP-3000の販売数。これがですね、約4万台を売り上げているんです。PSP goが約3万台なので、それを上回ってしまっているんです。ですから、PSPというハードそのものは堅調に売れていて、その上で、PSP goとPSP-3000のどっちが欲しいかとユーザーに問いかけた場合に、最も話題性のある発売週ですらPSP-3000の方が選ばれているんです。

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PSP goが抱える不安と未来への布石(AllAboutゲーム業界ニュース)

欲しい人がいれば売れるし、欲しい人がいなければ売れない

FFCCTCBの図
画面が大きいということは字も見やすくなりますから、高齢層なんかにはいいですよね。そういうことがパッと思い浮かぶ商品であるかどうか、という部分が売れるか売れないかに直接結びつきます。
このDSiLLとPSP goの差は、マーケティングの差であると言えます。マーケティングなんていうと小難しく感じるかもしれませんが、とても簡単な話です。

ある商品について、その商品が欲しい人がいれば売れます。欲しい人がいなければ売れません。当然ですね。じゃあ、欲しい人をどうやって探すのか、生み出すのか、そしてその為に商品をどういう形で世の中に送り出すのか、これを考えるのがマーケティングです。

DSiLLで言えば、DSの画面が大きくなりますよ、という1番の特徴を前面に出せば、大きいDSで遊びたいと思う人が手を挙げます。とてもシンプルに欲しい人を探せます。これがPSP goだと、オンラインでゲームがダウンロードして買えますよ、と言ってもPSP-3000と競合してしまいますので、PSP goが欲しいという人を探すことができません。これがDSiLLとPSP goの大きな差です。

あまりに単純に聞こえるかもしれませんが、この一見簡単な話は、ゲームのようなエンターテイメントの業界ではとても大切なことなんです。
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