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裁量労働制というゲーム業界の爆弾(3ページ目)

2008年6月16日、テクモ社員2名が会社を相手取り、残業代が支払われていないとして訴訟を起こしました。その背景にある裁量労働制という仕組みには、ゲーム業界全体に関わる問題が潜んでいるようです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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人件費を削ることの莫大なリスク

長期休暇にリゾートの図
忙しいばかりではなく、ゲームが完成したら、1ヶ月ほど一気にお休み、なんてことができる会社も。
誤解のない様に言っておきますと、裁量労働制を使っているからといって必ずしも人件費をケチっているとは限りません。実際、ガイドの奥さんはゲーム開発者で、裁量労働制の会社でグラフィッカーとして働いているのですが、だからと言って残業も、休日出勤もほとんどありません。また、休日返上で働いて、開発を終えると1ヶ月ドカーンと休ませる会社もあります。最初に申し上げた通り、ゲーム開発のような特殊な働き方にマッチした制度なので導入されているんですね。

逆の言い方をすれば、裁量労働制によって残業代をカットする背景には、高騰する開発費に対処できなくなっている企業の姿が伺えます。開発費が倍になったら、商品も倍売れるということであれば良いのですが、なかなかそうはいきません。簡単に売り上げは倍にはなりませんし、値段も倍にはできません。ということになればコストを出来るだけ削減しようとするのは、自然な流れではあります。

しかし、コンテンツ産業において、人件費を削るということは目に見えない大きなリスクがあります。単純な話です、才能に溢れ、前途洋々たる若者がいたとして、果たして仕事の量はたくさんあるけれど残業代は支払わないという企業に入りたがるでしょうか? ことは銭金だけの問題ではなく、人材に対する会社の姿勢が問われる話です。コンテンツ産業に才能が集まらなくなったら、それは即ち業界の衰退を意味します。市場が縮小し、ますます人件費が出せなくなるという悪循環に陥りかねません。こうなると、便利な仕組みが崩壊を導く爆弾に変わります。

才能と労働にはきちんと代価を支払う、そういう姿勢を貫く必要がどうしてもあります。しかし、開発費と売り上げのバランスが取れない。であれば、その才能の活用の仕方を考え直さなければなりません。大量の人と時間を投入して、画面の密度を上げていくことで付加価値をつけていた方向性を見直したり、作り上げたコンテンツをゲームを超えて幅広く活用していくことも、もっと考えなくてはいけないかもしれません。

一朝一夕に出来る話ではありませんね。試行錯誤と周到な準備を要します。だからこそ、先を見つめて、裁量労働制という名前で潜んでいる爆弾が爆発しないうちに、考えなくてはいけない問題ではないでしょうか。

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