荷風が晩年に住んだ八幡町へ
京成線八幡駅のホームから見える「大黒家」の看板 |
そして、昭和22年千葉県市川市の菅野に引っ越してきた。荷風、67歳のときのことである。
親戚や知人の家に住みながら、昭和32年に市川市八幡町に家を建てた。
浅草へ行くことも頻繁だったが、晩年はこの大黒家へ毎日のように通い、カツ丼を食べていたそうだ。
荷風が通った大黒家
こじんまるりとした八幡駅のそばにある「大黒家」はすぐにわかった。 |
こじんまりとした駅だ。ホームの向こう側に大きな大黒家の看板が見える。
日本最高峰の日記文学といわれている荷風の「断腸亭日乗」。その晩年の記述に「大黒家」はしばしば登場する。
とくに記述のほとんどなくなる最晩年は、一行だけ、
正午大黒屋食事。
と書かれている。「食事」の文字さえないことが多い。ちなみに本当は「大黒家」なのだが、荷風は「大黒屋」と記している。店が休みでも荷風はやってきた。やさしいお店の方は、荷風がくれば、休みでも料理を出したそうだ。
荷風セットをいただく。旨い!
これが荷風セット。並カツ丼、上新香、酒一合をセットにしたもので、1522円。ホームページのクーポン券を持っていくと1260円になる。 |
店のショーウィンドウに永井荷風の写真などがあった。荷風が愛したカツ丼は840円である。この店の公式ホームページを見ると荷風セットというものがあった。
カツ丼+上新香+日本酒一合
という組み合わせ。いつも荷風が食べていたものをセットにしたそうだ。
店内は広い。カウンター席、テーブル席、座敷席がある。
みんながカツ丼を食べているのかというとそうではなく、本来は天ぷら、うなぎといった日本料理のお店である。家族連れやカップルなどがいる。年齢層も幅広い。
荷風セットにする。1522円なのだが、ホームページのクーポン券をプリントアウトしてきたので、1260円。お酒が飲めない人はアイスクリームにすることもできる。
さて、カツ丼である。これが予想以上のおいしさだった。サクッとした衣にやわらかいお肉。しかもかなりの量だ。
お店の人にちょっと聞いてみたが、当時(荷風が通っていた)と、量も味も変わっていないそうだ。なるほど、荷風は毎日これをたべていたのか。そう思うとこれからの散歩にワクワクと胸が躍る。