ゲームセンターのメダルコーナーで見掛ける事が多くなったメダル自動預払機『メダルバンク』。このマシンには、利用者が設定するパスワードと、利用者の指紋で本人であることを確認するという、ゲームセンター機器として画期的なシステムを導入している。
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現在、指紋を使ったバイオメトリクス(生体)認証技術は、広くセキュリティーの分野で活用され、日々研究が進められている。では、そんなバイオメトリクス認証技術が、どういう意図で、どのような過程を経て、我々、ゲームプレーヤーが日々使うアミューズメント機器に組み込まれることになったのだろうか?
ここではそんな疑問に答えを見つけるべく、『メダルバンク』を開発した日本ユニカ株式会社、常務取締役、システム開発本部長の山岸潤一氏にお話を伺った。
――指紋認識というとセキュリティーの分野というイメージが強いんですが……。
そもそも、指紋認識がセキュリティーだけの分野と考えるのは間違いだと思うんです。
指紋というものは、何かをした時に、「自分がやりました」という"証明"を残せるものだと思うんです。
要は、"ログ"を残せるということですよね。この"ログ"を記録して、データを残す機器があれば、掴みにくい人の動きを"ログ"を蓄積した"データベース"として活かせるのではないかと。
そこで利便性も考慮して最適では無いか、というのが指紋認証なんです。
――『メダルバンク』を発売されたのはいつ頃だったんでしょうか?
当初は、自社で運営しているアミューズメント施設のメダル預け払いを合理化しようということで、5年ぐらい前にメダルバンクを店舗に導入して、それからこのメダルバンクを発売したのが3年ぐらい前ということですね。
――合理化を考えられたきっかけは何だったんでしょうか?
従来のゲームセンターでのメダルの預け払いシステムを考えますと、預けるお客さん本人が、預け書にサインや住所などを記入して、払い出す際も同じような作業を必要とします。これをお客さん側の立場に立って考えると、500枚くらいのメダルを預けて、払いだしてもらうなら、それもいいかもしれません。でも、10枚、20枚のメダルで、この作業はとても面倒ですよね。
――そうですね、10枚そこらの枚数では使い切ってしまおうかとも考えてしまいますよね。
たとえ少ない枚数でも預けたいお客さんはいると思うんです。でも、「少ないメダルじゃ気も引ける」といった具合に、お客さんに気を使わせてしまうんです。さらに店側としては、少ないメダルを預けるお客さんが増えれば、それだけスタッフの労力も増えます。
――そこでメダルバンクを開発されたというわけですね?
ええ。このメダルバンクは多くの店舗に導入して頂いて、利用されるお客さんに好評ですが、指紋認識で機械が匿名で認証するという点も、受けているひとつの理由かもしれませんね。
――認証技術には色々ありますが、指紋認証を選んだ理由は?
本人確認の手段として、手軽にできるという点。
これが指紋認証がベストであると判断した理由です。
たしかに認証には指紋以外にも、人の発する声から声紋をとって認証するもの、体内の血管で認証するもの、その他、色々あります。
ですが、人の手というのは、人間の体の中で、とても受身な所なんです。
例えば、何かアクションを起こすときには、まず手を使いますよね? 瞳の虹彩パターンで認証する技術は、かなり精度の高い認証ができるんですが、これを利用するためには、瞳に光を当てなければいけない。
これってストレスが大きいんです。指紋認証ならば、受身な部分である手を出して、指を当てるだけで済むんです。
――指紋認証のシステムはどういったものなんでしょうか?
認証は、センサーに当てられた指紋にポイントを設定して認識します。このポイントは、データに記録されますが、記録されたポイントデータを元に、指紋を復元することはできませんので、プライバシーの点でも安心です。