驚きその2 ワルドナー選手の躍進
驚いたことのもうひとつが、「卓球界のキング」ワルドナー選手(スウェーデン)の「大駆け」です。驚くとともに、現地に行かずに最も悔しい思いをした出来事、といってもいいかもしれません。ある年代以上のファンの方には「うんうん」とうなずいていただけると思いますが、「強いワルドナーを見る」というのは卓球の醍醐味のひとつですから。世界ランク2位の馬琳選手(中国)、同じく11位のティモ・ボル選手(ドイツ)という2人の優勝候補を撃破しての準決勝進出。五輪チャンピオンとなった柳承敏選手(韓国)にその勢いを食い止められ、3位決定戦で世界1位の王励勤選手(中国)に敗れてメダル獲得はなりませんでしたが、しかし、この38歳のプレーヤーがベスト4まで勝ち上がるということを、大会前にいったい誰が予想しえたでしょうね。少なくとも僕は予想できませんでした。
というのも、昨年9月のジャパンオープンで見たワルドナー選手は、腹は出てるわ、足は動かないわで、本来の彼のプレーと比べたら「オヤジ卓球」といってもいいほど。その一年前に右足を骨折してブランクがあったとはいえ、全盛期の彼のプレーに魅了された者としては、ちょっとがっかりしたんです。今年3月の世界選手権でも振るわなかったようですし。
ただ、それでも現役を続けているということは、「まだ何か狙ってるな」と思ってはいたのですが、まさか五輪でベスト4まで進出するとは。いやいや脱帽です。
『ワルドナー伝説』 |
「100年にひとりの天才」
ワルドナー選手は、サッカーでいうところの「ファンタジスタ」という表現がぴったりの選手です。たとえば『ワルドナー伝説』(イエンス・フェリッカ著、今野昇訳、卓球王国)という本の帯には、「100年にひとりの天才」とか、「卓球の神に愛された男」というコピーが載っているように、とにかく「天才」にまつわるあらゆる形容をされる選手です。たしかに僕も「そうだよな」と思うところがあって、プレーヤーの「天才度」をはかるときに、彼がひとつの基準となっています。
仕方のないこととはいえ、かつて憧れた年上のプレーヤーが少なくなっていくのは、やはり淋しいものです。来年の上海での世界選手権あたりで、もう一度「強いワルドナー」を見る至福の機会があればいいな、と思っています。
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