しかし、スーパーサーキット(SC)はハードスケジュールだ。年間100日。開催期間中は毎日のように試合があり、開催地への移動も多い。「練習はしたいけど、肉体的にガタがきてるので、あの期間中に練習すると、まず間違いなくケガをしますね」というほどだという。
世界のトップクラスと戦えるというメリットはあるものの、練習量は確実に減る。ヴェテランならともかく、「蓄え」の時期にある選手にとって、それはあまり幸せなことではないのかもしれない。蒋澎龍が荘智淵にチャイニーズ・タイペイのエースの座を奪われたのが格好の例であるように私にはみえる。
練習をしたい。もう一度、ヨーロッパに行こうか……。そんな思いを、スーパーサーキットの「同僚」のクレアンガ(ギリシャ)に打ち明けたところ、「ほんとうに質の高い練習をしたいんだったら、韓国か中国に行ったほうがいい。試合はSCでもできるから」とアドバイスを受けた。
確かに、SCへの出場も考えると、時差調整の必要なヨーロッパよりもアジアのほうが具合がいい。そして、青森山田学園を介して、希望条件を備えたチームを見つけたという。
迷いも、いまは吹っ切れたそうだ。「ジャパントップ12」があった2月2日の夜、父親と初めて大ゲンカをしたことである。
バックハンドを使うことを意識するあまり、足が止まった。持ち味をまったく発揮しないまま、予選リーグで敗れた。「勝とうとはしたんですけど、その戦術、スタイルでやったことがないから、かみ合わない。いまひとつ気合いも入らなかった。そういうのに苛立ちを感じたんでしょうね」
試合を観戦していた父の則明さんから、家に帰るなり「お前の卓球はそれじゃないだろう!」と一喝された。だったら、走りこむとか、もっといろいろと努力する必要があるだろう、と。
「散歩に出て、自分の卓球を見つめ直して。SCで強い選手とやっていて、そこそこの勝負ができている、俺はそこまでいけるんだというふうに思い込んじゃっていて。そこが間違いだった。つけ加えなきゃいけないところはあるけれども、まず自分のいいところをもっと伸ばそう、上ばっかり見ていたころの初心に戻ろう、と」
三田村の所属するA級は4月、5月、そして9月にリーグ戦がある。6月は日本に戻ってSCに出場する。それ以外は中国に腰を据えて練習に打ち込むという。新天地で「再出発」をはかる三田村宗明。中国リーグでのデビュー戦は4月2日の予定だ。
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