クレーコートで活躍できる日本人男子が出現
チーターを思わせる動きをする江原弘泰 |
見た目は愛くるしい好青年だが、コートに入ると野性味が露出される。まるでチーターのように遠くのボールに追いつき飛びかかる。速い動きも、方向転換も、ラケットを振る感じも、全身をバネのように使う。膝や足首の感じも柔らかい。
江原はこの1年、大きくランキングを上昇させている。2007年9月の兵庫G5の2週連続優勝から始まり、2008年には山外涼月らと一緒に行ったチリG2でダブルスに優勝(ペア関口周一)。そして、ウルグアイG2でシングルス優勝した。
特にウルグアイでのシングルス優勝は、日本男子テニス界には本当にうれしい知らせ。南米遠征はクレーコート(レッドクレー)、日本人男子が苦手としてきたコートだ。球足が遅く、ボールがよく跳ねる。そこで活躍するには、長いラリーを続ける忍耐力、体力、フットワーク、トップスピンのかかるストロークに加え、長くなりがちなラリーを終わらせるための強烈な武器が必要となる。
江原がクレーコートで活躍できた原動力は、クレーコートに必要な要素をとりそろえ、戦い方を覚え始めたからというのが1つの理由であろう。だが、彼が持つ最大の武器は、それを超えたところにある。
怪我をおしての強行出場、そこで得た自信
江原弘泰は全日本ジュニア14歳以下優勝(2005年)、16歳以下ベスト4(2006年)、16歳以下準優勝(2007年)などの好成績を叩き出し、昔から注目される選手であった。だがこの2年、成長期のためか怪我も多く、予定通りに進んでいるとはいえない。2006年8月全日本ジュニア4週間前は右足の中足骨を剥離骨折していたが、奇跡のベスト4。2007年9月兵庫ITFジュニアG5では2週連続優勝後に尾骨の剥離骨折が判明。10月頭の大阪スーパージュニアGAはドクターストップ。当然キャンセルしたいところだが、強行出場。コーチとは1回戦だけの約束で無理を押して出場し、見事勝利。この勝利で得たポイントのおかげで、目標としていた2008年1月のオーストラリアンオープンジュニアGAの予選にギリギリのラインに届いた。
やっと出場したその大会では、「全身がつりそうになった」と言いながらも見事予選突破。本戦では負けはしたものの、ファイナルセットの大激戦を演じた。試合の感想を尋ねると「自分でもビックリするくらいのいい試合ができた。ファイトできたからよかったです」とまずは、自分が精神的に引かずに戦えたことについて答える。
「オーストラリアンオープンジュニアに出場する」という目標をかげた後は、骨折、怪我に遭遇しても目標達成への意思は揺らがない。勝利することで自分に自信が持てたことであろう。この自信こそが、クレーコートのウルグアイG2優勝原動力になっているのだ。