知られざる名著、『アマチュアゴルフ』
ハンディキャップ22の著者が書いたレッスン本、大岡昇平『アマチュアゴルフ』 |
また、古くからの友人であった詩人中原中也の伝記を物し、スタンダール研究家としても知られる戦後の日本文学の大家といえる人物です。先日公開となった『明日への遺言』の原作者(原題『ながい旅』)でもあります。
その大岡昇平が50歳を過ぎてからゴルフに熱中し、趣味が高じてなんとゴルフのレッスン本まで書いていることはあまり知られていません。このとき大岡はハンディキャップ22という典型的なアベレージゴルファー。当時の写真には、左手にくっきりとゴルフ焼け(※グローブの日焼け跡の事。)のあとが残っています。
そのレッスン本『アマチュアゴルフ』では、ゴルフ歴4年にして80台を3回マークした勢いのままに、ゴルフの技術論にまで踏み込んでいます。
もともと研究熱心な傾向のある大岡は、古今のレッスン本を読み漁り、仲間内でも本ばかり読んでセオリーにうるさいという評判だったとか。実際のプレーでミスをすると同伴競技者から「お前の本には、そんなことが書いてあったのか?」と嫌味を言われ悔しい思いをしたそうです。
著者がハンディキャップ22で書かれたレッスン本は、後にも先にもこの『アマチュアゴルフ』だけだろうと思っていたのですが、大岡本人によると、そもそも最初にゴルフの本を書いたのが、ハンディキャップ24のセントアンドリュースのメンバーだったということです。
『アマチュアゴルフ』は、大岡の小説集などの著作の倍以上が売れたとか。ゴルフの著作へのニーズが高かったことが伺えます。今回は、この知られざる名著、大岡昇平『アマチュアゴルフ』を紹介します。