ネパール人も気になった“プロレスはリアルかフェイクか”
――情勢のこともありますが、複雑ですね。「当時は、国王にも呼ばれたよ。国王とも親しかったからね。彼からも“なんで反政府を擁護するんだ?”って追求されたよ。正直に話したら理解してくれたけどね。まあ、これは長い話なんだよ」
――では、話を戻して、ネパールのカトマンズでプロレスを始めた時、国内での反響はどんなものでしたか?
「若い人達にとっては、情報が多い時代だろ?インターネットやケーブルテレビもあるけど、彼らは“リアルな強さ”を観たことがない。だから、戦いを映像でしか観たことない人達にとって、それが目前で行われた時、非常な興奮を示すんだ」
――なるほど。ただ、戦い(=格闘)とプロレスもまた違うものですが、ネパールでの反応というは?
「彼らは試合後にこう聞いてくるよ。プロレスはリアルかフェイクかって」
――で、どう答えるのですか?
「その時、俺がどう答えたかと言えば、“ストーリーは作りモノだが、戦いは本物だ”と伝えたさ。そして、これをやるにはとてつもないトレーニングが必要だから、絶対に自宅や学校でマネをするなってな」
――その大会では、25000人を集めて試合をされたそうですね?
「最初にやった大会では、靖国での試合のように3000人くらいの観客だったが、次の大会では、メッセージ性の強いプロレスをやったんだ。そこでは、俺がアメリカ人となって、アメリカのマスクを被り、テロリストを倒すといった当時の世情を現すような試合をやったんだ。すると、5000人しか入らないシティホールに、7000人が詰めかけ暴動になってしまったよ」
――暴動ですか?
「そこで大会を取材していた記者から、“勘弁してくれ”、“民衆に殴られた”って文句を言われたよ」
――根本的にネパール人は、戦いが好きなんですか?
「ああ、そうだ。5ヶ月くらい前に、色んな格闘技を集めたイベントをやったんだが、ボクシングでは寝てる観客が多かったのだが、レスリングでは皆、とても興奮して観ていたよ。だから、戦いは戦いでも、ネパール人はプロレスが好きなんだよ」
――今、日本とネパールでは交流も少ないようです。
「まさにこれこそが自分のやるべき使命だと思っているんだ。プロレスを通じて、日本とネパールを結び付けたいね。二つの国を結びつけることこそが自分の生き甲斐になっているよ」
――ネパールでプロレスを開催するためには、当然プロレスラーの育成も必要ですが?
「もともと24人の弟子を育ててきたんだけど、カタールや韓国に金を稼ぎに出てしまったものもいる。だから、今は俺の元でハードなトレーニングを続けているのは、15~16人かな。ちなみに、そこにはブラック・リザード(とかげ)ってのがいるんだ。恐ろしいレスラーを育てているよ」
――とかげですか?
「そうだ。ブラック・リザードは、とてつもなく高いジャンプから、強烈なエルボーを落とすんだ。彼が日本に来たら、誰もが驚くだろう」