プロレスラーの複雑で華麗な動きは、芸術の域へ

丸藤正道のGHC王座戴冠は、プロレス界に新時代到来を告げた
プロレスは時代と共に変わり行く。かつては“日本人vs外国人”の構図を土台にしたド迫力の肉弾戦こそが、プロレスの持つ最大の魅力であった。規格外の大男がリング上で躍動し、激突し、火花を散らす。そして、外人レスラーをなぎ倒す日本人の姿に、戦後の敗戦ショックに沈んでいたこの国は、熱狂と復興への活力を与えられてきた。

平成に入り、他団体時代を迎えた日本プロレス界。近年ではプロレスの人気低迷も影響したのか、大型新人と呼ばれるような人材の確保が難しく、殆んどの団体で入門条件も多様化。これまでのプロレス界では常識だった「180cm/80kg以上」といった最低条件も緩み、現在では、選手の熱意や身体能力を重視する団体も少なくない。そのため、ジュニアヘビー級と呼ばれる軽量級のレスラーも増えている。

しかし、嘆く必要はないだろう。彼ら軽量級のレスラーたちは、重量級レスラーには出来ない、高度で立体的、華麗な必殺技を次々と生み出した。重量級レスラーによる肉弾戦が王道なら、彼らの超人的な技もまた、プロレスの新たな表現方法として定番となりつつある。

そんな新時代到来を象徴する画期的な出来事が起こったのは、2006年9月。プロレスリング・ノアに所属する丸藤正道が、メジャーのトップタイトルGHCヘビー級王座を戴冠。150年ともいわれる日本プロレス史においても、ヘビー級レスラーのみが独占を続けた“業界の顔”へと成り上がることで、これまでの通説を根底から覆した。

と同時に、この快挙は、軽量級の彼らが成す“高度な技の攻防”が、重量級レスラーによる“肉弾戦”を凌駕した瞬間ともいえた。驚異的な身体能力から繰り出される必殺技の数々は、見る者の想像を超え、芸術という名の新たなる境地へ到達しようとしている。

プロレス新時代へ。現代のマット界を象徴する“芸術的必殺技ベスト5”を下記に挙げてみよう。

第5位:石森太二/スーパースターエルボー


フィニッシュを巡るスリリングな攻防が最大の魅力、スーパースターエルボー。闘龍門Xから、ドラゴンドア(エルドラド)、フリーとなってプロレスリング・ノアに参戦する石森太二のフィニッシュホールド。相手を寝かしてから、ロープへ助走。ハンドスプリングをする要領で、ロープのリバウンドを利用し跳ね返り、その勢いをもって着地と同時にバク宙450°回転。遠心力でエルボーを叩き落すというもの。

この技の特徴は、モーションに入ってからインパクトの瞬間までが長いため、途中でかわされたり、タッグマッチの場合では相手チームのカットに遭うことも多い。逆をいえば、石森の試合においてはフィニッシュを巡る攻防に見所が多く、観戦するファンにとっても俄然熱が帯びてくる瞬間でもある。


第4位:リトル・ドラゴン(現エル・ブレイザー)/ウルトラドラゴンラナ

エル・ブレイザーとなってからは、まだ披露していないリトル・ドラゴン時代の最高難易空中技
プロレス界最高難易フィニッシュホールド、ウルトラドラゴンラナ。エルドラドで活躍するエル・ブレイザーが、一つ前の姿、リトル・ドラゴンの時代に繰り出したフィニッシュホールド。リングに背を向けてコーナー最上段へと駆け上がり、振り向き様に身体を捻りながら前宙返り。対戦相手の両肩に飛び乗るや、一気にウラカンラナ(高角度後方回転エビ固め)で丸め込む。

その華麗で複雑な超立体殺法は、現在のプロレス界において最高難易フィニッシュホールドと呼ぶに相応しい。初公開は2005年7月19日。ドラゴンドア(エルドラド)旗揚げ戦で自分よりも一回り以上大きい、菅原拓也から完璧ピンフォールを奪いファンに衝撃を与えた。