プロレス/プロレス関連情報

"世界に力道山を"ネパールの英雄を知る(後)

ネパールの国民的英雄、プロレスラー、ヒマラヤンタイガーは、祖国でゼロからプロレスを勃興。その裏側では内紛による影響、そして、過酷な現実との戦いが続いていた。

執筆者:川頭 広卓

ネパールでプロレスを勃興、その背景には・・・

※ヒマラヤンタイガー・インタビュー前編はコチラから

――さて、タイガーさんがネパールでプロレスを勃興した2004年というのは、内戦の真っ只中でしたよね?当時のネパール情勢は、どのような状態だったのでしょうか?


「当時のネパールでは、マオイスト(※)が反政府運動をしている最中で非常に治安が悪く、不穏なことも多かったんだ。俺が、朝5時半くらいに目が覚めて、トイレに行こうとしたら突然暴漢に襲われたこともあったよ。“金を出せ!”ってね」

――えっ、大丈夫だったんですか?

「これは今もそうなんだけど、当時からネパールのほとんど人、特に著名な人間はボディガードをつけるんだ。だが、俺は一度もそんなものをつけたことはない。俺は何も間違ったことをしていないし、中には、“アメリカに行った時に稼いだ金でボディガードを雇え”と助言をするヤツもいた。でも、アメリカに行ったのは、ネパールを知らしめるために行った訳だから、そんなことに金は使えないだろ?」

――しかし、身に危険が及んではやむを得ないこともあるのではないですか?

「確かに、毎日、ギャングや反政府運動のヤツらがくるから、俺の母親が“お金を払えば、彼らはこなくなるから、いい加減お金を払えば?”と言ってきたこともあった。でも、金は払えない。これは最後まで貫いたよ」

――金を払えば、ギャングや反政府運動の人間はこなくなるのですか?

「当時、ネパールでは、マオイストが来て、ヤツらに金を払ったらレシートをくれたんだ。レシートをみせれば、もう襲われなくなるんだけど、逆にもしそれをやってしまうと、今度は自分が政府に反政府運動者だと誤解をされ、牢屋に入れられてしまうんだ。当時は警察の有力な人間までもが殺されてしまうような不安定な情勢の中で、俺は一切妥協せず、最後まで金を払うことはなかったんだ」

――男の中の男ですね。

「もし、俺が金を払わなかったことで殺されていたとしても、それは自分のポリシーに反することだから、そこに悔いはないんだ」

――ただ、それが興行となれば話は別ですよね?タイガーさんのプロレスイベントを邪魔される恐れがあったのでは?

「何かの雑誌からインタビューを受けた際に、俺をサポートしてくれるジャーナリストが、俺の発言として、反政府運動を擁護する内容を書いたんだ。そしたら、その翌日から彼らは急にこなくなった上に、興行もできるようになったという訳さ(笑)」
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