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兄格闘家、弟プロレスラー。兄弟の闘い(前)(3ページ目)

総合格闘技の世界に身を置き『HERO'S』で闘うRYOと、プロレス団体『ZERO1-MAX』で頂点を狙う崔領二。実直で真面目な兄と、多彩な感性を持つ弟。二人は兄弟での飛躍を誓う。

執筆者:川頭 広卓

海外での拠り所、ゴルドーとの出会い

――15歳当時に、その考え、発想ができるってすごいことだと思いますよ。

領二「僕はそんなに度胸がある方じゃないんですよ。でも、人生の転機には、何故か不思議な自信が湧いてくるんです。そんな行動派じゃないのに、誰かに後押しされているような、頭が命令されているかの如く、行ってしまうんですよね。実はプロレス入った時もそうなんです」

――身体が人生の転機を察知している?

領二「あの時、心を動かされたものは何だったんだろうって、今でも思いますね。留学はお金も掛かりましたから、親にも迷惑掛けたし、“そこまでする必要はあったのかな?”って。でも、もちろん、その経験は良かったと思っているんですよ」

――現地では、格闘技を習うためにジェラルド・ゴルドーのジムに通われたんですよね?

領二「実は、行ってしばらくしてから、向こうで揉めましてね」

――え、どういうことですか?

領二「向こうで入学して、いじめに遭ったのですが、いじめと言っても、向こうでは伝統的ないじめみたいなものがあって、要はイギリスって、建物とか、宗教とか、全部伝統なんですけど、それは血を汚さない貴族の伝統なんですよ」

――いじめにも、貴族の伝統があったということですか?

領二「貴族と部落の人間がうまいこと分かれている。要は、お金持ちと貧乏人。だから、彼らは、僕を排除したかったんですよね。学校に僕がいるっていうだけで気に食わないから、組織ぐるみで排除しようという感じでしたよね。それで、けんかとかもあって、そこから強さというものに惹かれたのかもしれません」

――ゴルドーのジムを知ったのは?

領二「日本から格闘技通信とかを送って貰ったのですが、外国で読む日本の雑誌程、面白いものはないんですよ。で、隅から隅まで読んで、ゴルドーの記事を見つけて“これは違うな”って思って、当時、オランダまで航空券がすごい安くて1万円しなかったんです」

――通ったんですか?

領二「はい、休みの日とかに行ってましたね。でも、今考えると、これは宗教とすごい似ているんですよ。彼らは休みの日に協会に行って、皆でお祈りして、先生とかは泣いてるんですよ。で、プロテスタントがどうとか、そんな話しばっかりしている。初めは何でこんなことしているのか分からなかったんですよ。でも、オランダから帰ってきて感じたのは、学校はつまらないから、日本には帰りたい。でも、オランダに行った時に、自分の好きなことができて、負けてましたけど空手の大会とかにも出れた。イギリスに帰ってきてから、現実に直面するのですが、自分には(オランダのジムで一緒だった)仲間がいるというだけで、気持ちの持ち方が違ってくるというか、救われましたよね。自分には帰るところがある、仲間がいる。すごい心強かったのを覚えています」

――今のいじめ問題にも相通じる一つの解決策ですね。

領二「よく武道をやるのは、お金だけじゃないって言いますよね。武道を習う意味っていうのがちょっと見えたかなって気がしました」

――結局イギリスにはどのくらい行かれていたのですか?

領二「イギリスには3年半いましたね。で、17歳の時にゴルドーのところへ行って、トータルで通ったのは1年くらいですか・・・」

――なんか、走る方もされていたそうですね?

領二「あ、そうですね。クロスカントリーなんですけど、これも僕にとっては部活がないので、それをやるしかなかったんです」

――クロスカントリーでは現地の大会で優勝もされたとか?

RYO「なんか地元でも、川の周りを5.7kmくらいだったと思うのですが、長距離走のタイムトライアルあって、コイツがもっと身体の細い時に、イギリスから帰ってきて、すごいタイム叩き出したんですよね。“あ、嘘じゃなかったんだ”って思いましたもん。嘘で塗り固められたコイツが・・・(笑)」

領二「向こうでやるスポーツがなかったですからね。こっちでいう箱根駅伝なんで、町で大会があれば、皆が観に来るんで負けたくない訳ですよ。だから、練習方法も分からず、大草原をずっと走ってました」

――では、逆にRYOさんの方は領二さんが帰国した当時も、まだ格闘技は始められていなかったのですか?

RYO「全くですね」

――今まで、領二さんがバスケや剣道をお兄さんの影響で始めていたのが、格闘技だけは領二さんが先に始めていた?始めて逆転した?

RYO「そうですね」

領二「格闘技に関しては逆なんですよ。僕が日本帰ってきて、格闘技やりたいなと思って、色んな道場探していたのが、ある時、(兄を)誘ったんです。そしたら、面白くなってきたみたいで、その後、アマチュア修斗とかにも出るようになっていったんですよ」

――アマ修斗って、すぐ試合に出場していたんですか?

領二「それと入れ替わるように、僕もプロレスの方へ行きました。橋本(真也)さんに誘って頂いて、ZERO-ONEに入りましたので、プロレスをやっている時は、“兄貴も格闘技やってるな”くらいでしたね」

RYO「ちょこっと試合出て、負けたり勝ったりで、まだ死に物狂いでやるっていう感じではなかったんですよね。だから、大舞台で試合にするようになったのは、ここ最近です」

――これまで、総合の試合に出られる時は、リングネームは変えられていたのですか?

RYO「いや、普通に本名の崔領で出ていましたね。名前が(崔領二と)被るので本名でいかんと、RYOにしましたね」

――同じ韻を踏むという名前は兄弟でも多いかもしれませんが、“領”に“二”を足しただけとは・・・(笑)。

領二「まあ、次男ですからね」

RYO「適当に付け過ぎだろうって(笑)」

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◇関連リンク
崔領二ブログ
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ZERO1-MAX公式サイト
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