「プロレスに対して真剣か否かが論じられていくべき」
山口社長:プロレスっていうものにイニシエーションを受けているというか、洗脳されている。イニシエーションを受けた人しかリングに上がれない、イニシエーションを受けた人しかファンになれないっていう状況では、この先、遠心力を持たないなっていうところが発火点ですよね。だから“これはやっちゃダメ”というダメな原因が実は“思い込み”だけであってハッキリしないこともある。だったら、やってみる価値はあるんじゃないかところから始まってることも多々あります。ガイド:なるほど。分かりやすいですね。
山口社長:つまり、プロレスラーになりたい人が入門して、丸坊主になる、新弟子になる、身体を大きくする、もう詰め込めないってくらいに食べさせられ、先輩にいじめられる。いろいろ特殊なイニシエーションを受けてデビューして、「一体僕は何をやっているだろう?」っていう苦しみを2年も3年も味わうんだけど、ケーフェイ〔※2〕はまだ教えて貰えない。プロレスの仕組みすらハッキリ教えられずに、なんとなくプロレスラーとしてやっていく。芸人で言えば、一人の師匠に付いて“見て覚えろ”っていう徒弟制度の世界に近いですよね。残る人は限られている。
ガイド:今も残っているかもしれませんが、旧来の習慣が新たな成長を阻害しているという訳ですね。
山口社長:そういう世界は、これまでの時代では絶対に必要だったけど、やっぱりやる側の人数が増えなければブームにならないと思うんですよ。だから、まずは競技人口を増やしたいのですが、それには特殊なイニシエーションを施しているヒマはない。今はプロレスラーがハッスルに上がっていますが、プロレス出身のハッスラーだけではなく、プロレス出身でない人も、ハッスラーを目指せば、本気で取り組めばハッスルに上がれる。イニシエーションを受けなくても本気になればなれる。そういう道の礎を3年間掛けて作ってきたつもりなんです。
ガイド:プロレスだけできてもダメだと?
山口社長:逆に今は、プロレス出身者だったら誰でもハッスルに上がれるのかと言われれば簡単には上がれない。今はプロレス出身のハッスラーが多いんですが、今ハッスルに上がっているメンバーこそが、ハッスラーですよね。それはものすごく高いハードルになってきている。例えば川田利明という選手は、試合の前に歌を唄って、試合をやって、試合の後にマイクアピールがあって、最後にはバルコニーに上がって高田総統との掛け合いをみせる。並みのプロレスラーじゃできませんよね(笑)。
ガイド:これまでは一試合やって終わっていたのが、ハッスルの場合は、イベント進行中、全ての時間に関わっていなければならないですね。
山口社長:ハッスルは“スポーツですか?作品ですか?”と問われれば、堂々と胸を張って「作品です」と答えたいんですよ。もちろんスポーツの要素は腐るほどありますけどね。その「リングを使った作品」という概念を、チームの結束力で3年間かけて創り上げてきたというところですね。
ガイド:ちなみに、これまで多くのタレントさんがハッスルのリングへ上がってきました。インリン様やHGさんの様に、真剣に取り組んで今も活躍している人もいますが、中にはすぐに消えてしまう人もいます。当然、タレントさんを起用すれば投資も必要となりますが、リスクも高い。その辺は割り切って考えているのでしょうか?
山口社長:ハッスルに一度でも上がった人には継続してやってほしいというのは山々なんですが、当然、ご本人の適正、不適正というのもあります。今まで、プロレスっていうのは、真剣勝負か否かというところで論じられてきたジャンルでもあるのですが、これからは、プロレスに対して真剣か否かというところが論じられていくべきだと思うんですよ。真剣=バチバチやりあうことだけではないと思うんですね。
ガイド:真剣な取り組みをみせるタレントさんの出現を待っている部分もある?
山口社長:やってみなければ分からない部分もありますけど、最近では僕の中では、最初に話し合った時点で、ハッスルに向いてるのかどうか分かるようになってきましたね(笑)。