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荒鷲の不孝息子35年目の飛翔・坂口征夫(3)(2ページ目)

父はプロレスラー、弟は俳優。総合格闘家坂口征夫には、常に家族の威光が覆い被さる。35歳、ようやく遅すぎる開花を迎えた長男が、不良少年時代、夢の挫折、家族との確執…その壮絶な過去を語り始めた。

執筆者:井田 英登

四面楚歌の日々。渋谷の町に見つけた居場所


坂口「で、その後、憲二は、「お父さんとお母さんがゴルフに凝ってるから」みたいなかんじで、ゴルフに行っちゃって。いつの間にかゴルフ場のバイトまで始めてるんですよ(笑)。「おまえ、なんで金稼いでいいってことになってるの?」って、俺はずーっとバイト禁止だったのに(笑)。その辺がなんか当時矛盾してて、なんだこいつ、みたいな感じでしたね」

――兄弟で分け隔てがあるのはきついなあ。グレる典型的なケースじゃないすか(笑)

坂口「で、“俺は俺でやるからいい”みたいな気持ちが強くなっていきましたね」

――四面楚歌というか、家庭のなかでの居場所がなくなって。

坂口「高二、高三の時ぐらいの時から、すごいそんな感じでしたね。で、結局、渋谷に遊びに行けば、仲間がいて、友達が居て、そういう場所のほうがよっぽど居心地がよくなって」

――きっと当時、みんな同じような疎外感を抱えてたのかもしれないですね。

坂口「そうでしょうね」


――当時の仲間内では、そういう話とかはしたんですか?

坂口「いや、言いはしなかったですね。とりあえず、向こうに行けば好き勝手ができてたんで。一番居心地のいい場所に集まってたんじゃないですかね」

――変な話、ケンカとかはガンガンやってたってことですけど、女の子とかはどうでした?(笑)

坂口「いやー、女なんかは苦手でしたね(笑)。全然ダメで、話ができないんですね。男子校だったんで、ましてその当時、卒業するまで坊主だったんで。デート…っていうほどつきあってないんですけど、一緒に飯食うんでも、何喋っていいかわかんないんですよね(苦笑)」

――不器用だったんだなあ(笑)

坂口「ずーっと延々喋れなかったっす(笑)。今も多分酒はいらないと喋れない(笑)。多分、何喋っていいか全くわかんなくて、なれてくると大丈夫だと思うんですけど、人見知りするタイプなんで。最近はこれでもだいぶ喋れるようになったかなって。だから、そういう女っ気みたいなもんは、まったく無かったですね。とにかく、パチンコとケンカって(笑)」

――チーマーっていうより、全然古いタイプの不良ですね。

坂口「そうなんすよねえ。だからカツアゲとかすんのもすっごいイヤだったし、友達がやってるの見ても、もうやめろって。新宿にしても、原宿にしても、渋谷にしても、修学旅行生とか結構来るじゃないですか。一時、ひどいときは学校早く終わって、竹下通りで東郷神社のところでみんな座って待ってて。弱いのが二人ぐらい竹下通りに行かせとくと、当然そういうトッポい人たちがケンカ売ってくるじゃないですか。そうすると一人が逃げて来た瞬間に、みんなでがーっと行く。竹下通りのど真ん中で消化器とかぶっぱなして大喧嘩して(笑)」

――あなた、マンガみたいっつか、ビーバップハイスクールのリアル版みたいな青春やってたんですね(笑)

坂口「いやもう、ホントあんな感じでしたよ。うちの弟とかが『凶気の桜』って映画に出てたんですけど、『あれって、兄貴たちのことだろ?』みたいな。あんなノリだった…らしいですね、ハタから見れば。自分たちはもうそれが楽しくて。部活動の鞄とかに、柔道着の下に消化器いれてとか、いろいろ灰皿持ってみたり、みたいな感じの工夫が楽しくて。ま、むちゃくちゃしてましたね、今考えてみると(笑)」

――まあ、エネルギーが余ってたんでしょう。発散の仕方として、良いとは言い難いけど…まあ、場を得て活き活きとしてたんでしょうね。いつの時代も不良ってそうですよね。前田日明さんが高校時代、電車にのったら、まずこいつとケンカしたらどうなるかって、片っ端からシミュレーションしてた、みたいなことを本に書いてるんですけど(笑)

坂口「わかります(笑)」

荒鷲の不孝息子35年目の飛翔・坂口征夫(4)に続く
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