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"ジョシカクNow & Then" 総決算/美女格闘家Best5(3) 渡辺久江・女子枠越えの苦闘(上)(3ページ目)

2000年12月のReMix旗揚げを嚆矢とするプロ女子格闘技は、今やすっかり定着した。シーンをリードする美貌と実力を兼ね備えた注目5選手を通して、「ジョシカク」を総決算。

執筆者:井田 英登

「Girls SHOCK」エースへの抜擢

なんとこの年の9月には全日本キックに電撃入団。「Girls SHOCK」小川愉可プロデューサーの嘱望もあって、エースの座を担う事になる。だが、>移籍初戦となるこの大会で、J-netのグレイシャアAkiに迎撃され判定負けを喫してしまう。野心と実力の乖離とでも言おうか、デビュー二年足らずの新人としてみるなら渡辺の実力は十分すぎるものだったが、やはりそれぞれのジャンルのトップに君臨する“エース級”の選手の前には、やはり一歩及ばないのであった。

翌月の12月にはタイに渡り、ナムワーンノーイ・サックブンマーと対戦。この試合には「インターナショナル女子ムエタイ・ライトフライ級王者」 なるタイトルが掛けられたが、対戦相手はアイドル歌手として「4TEEN」というグループの活動する傍らムエタイでも闘うという、ちょっとキワものの選手。パンチ合戦となった激戦の末に勝利して、このタイトルを奪取した渡辺ではあるが、やはり大きな白星とは言い難い。

徐々に注目が高まる中、イマイチ吹っ切れない試合が続き、当人にとってこの問題は大きくのしかかるようになっていく。翌年6月の「Girls SHOCK V」でも判定勝利を飾ったものの、内容の煮え切らなさに我慢できず、渡辺はリング上で「全試合判定で、メインに何を期待されているかわかっていたんですけど…。小川さん私に試練を与えて下さい」という発言を残していたりする。

この発言がきっかけとなり、渡辺は全日本キックが企画したミャンマーでの“素手のムエタイ”ラ・ウェイとの対抗戦派遣団に名を連ねる事になる。当人は男子選手に混じって、現地での素手の試合に志願するものの、対戦相手が見つからず試合は実現しなかった。この辺りの過激な志向性や発言を、成長への道を模索する足掻きと見るか、あるいは単なる売名行為と見るかによって、渡辺への評価は大きく変わるだろう。

「黄金筋肉トーナメント」でついに上位越え

若干、この発言とは時系列が前後するが、渡辺の存在が大きくフィーチャーされるきっかけの一つになったイベントが開催される。

2004年5月7日にTBSの番組企画で開催された、ワンデートーナメント「黄金筋肉(ゴールデンマッスル)女子総合格闘技 最強女王決定トーナメント」である。8人トーナメントに出場したのは元女子プロレスラーの石川美津穂やビジュアル系ファイターの羽柴まゆみなど、どちらかというとルックス重視の選手に加えて、空手や日本拳法出身で総合スタイルに不慣れな無名選手。実際、渡辺の脅威になりそうな存在は、スマックの常連である金子真理ぐらいのものであった。(逆にキックでも総合でもすでに評価の高いジェット・イズミがリザーバー枠で試合をするなど、若干意図不明なマッチメイクもあったわけだが。)

渡辺は、デビュー直後の2002年8月にこの金子と対戦して判定で敗れている。当時は、新進の渡辺が、キャリアに勝る金子を打撃で追い上げた試合として話題になったわけだが、ここで同じ結果に終われば、三ジャンルをめまぐるしく動き回った渡辺の活動自体、意味が無かった事になりかねない。両者の再戦が実現すれば、渡辺にとってのリベンジマッチというだけでなく、トップを伺う二人が二年間にどれだけ実力を伸ばしたかを測る、一つの物差しとなるはずであった。

そして、決勝戦で実現したこの対戦は、序盤に金子が二度に渡り腕十字を仕掛けるなど相変わらずの安定した実力を見せつけたが、後半、渡辺がローキックを中心とした打撃戦でペースを握り判定勝利を奪う。

ここで、一つ「キャリアの壁」を越えた渡辺は、“二番手グループ”から抜け出し、ジョシカクのトップグループ侵攻に片手を掛ける立ち位置を獲得したと言えるだろう。実際、このトーナメントでは「女・魔裟斗」のイメージ付けも成功しており、明快な存在感を示す事に成功していたと思う。

その勢いを駆って凱旋したホームグラウンド「Girls SHOCK」での、自らの試合内容に対して、渡辺が苛立ちを隠せなかったのは、やはり「黄金筋肉」での見せた飛躍との落差が、暗に影響していると見て間違えないだろう。

【PART-4】渡辺久江・女子枠越えの苦闘(下)へ続く
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