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"ジョシカクNow & Then" 総決算/美女格闘家Best5(3) 渡辺久江・女子枠越えの苦闘(上)(2ページ目)

2000年12月のReMix旗揚げを嚆矢とするプロ女子格闘技は、今やすっかり定着した。シーンをリードする美貌と実力を兼ね備えた注目5選手を通して、「ジョシカク」を総決算。

執筆者:井田 英登

だが、今の所その高い志に対して、見合う戦績がついて来ていないのも事実。一部のお先走りな媒体が、彼女のルックスに注目して持ち上げるような気配を見せていた時期がある。しかし、それは本来彼女が望む「カッコ良さ」をファンに伝える助けにはなるまい。偶像として真に人の心を動かすのは、上辺をなぜたような賞賛の言葉ではなく、一つの確かな結果であり、行動だ。その意味で、渡辺には、まだ自らの言葉を上回る実態がない。(実際、現在の彼女の戦績を考えれば、まだこのコラムさえもまだ「青田買い」に過ぎる気もする。)

しかし、それでも高く飛ぼうとする意志と、目指す目標の正しさを持って、渡辺のチャレンジは是としたい。真のヒロインとしてファンに認知されるためには、「ジョシカク」という狭い“保護区”で飼い殺しにされてはいけない。そのことに自覚的であるという一点をもって、渡辺の姿勢は支持されるべきであろう。

彼女が範として追走する魔裟斗なども、かつて「キックはマイナージャンル」と決めつけていた業界の空気を蹴飛ばして、一般社会にまで届く存在感を打ち立てて見せた。時代的に「K-1 MAX」というおあつらえ向けの飛躍の舞台があったという事実は否定しないが、同様のチャンスを与えられながら「K-1 JAPAN」のスター予備軍たちが結局それをモノにできなかったのも、またもう一つの事実である。

今、渡辺は「結果」を出すべくもがき苦しんでいる最中であり、彼女の言葉やルックスに惹き付けられたファンも、今はその等身大のもがきの成否を静かに見つめるべきであろう。

御託が長くなった。渡辺本人の経歴をたどる作業に戻ろう。2002年4月スマックガールでプロデビューを飾った渡辺は、デビュー戦を反則によって落としている。対戦相手の大門にテイクダウンされると、渡辺は下から顔面パンチを放ってしまったのである。これは、グラウンドでの顔面パンチを認めないスマックにおいては明らかな反則行為。しかし、反射的にそんな攻撃が出てしまう辺りに、渡辺のファイターとしての資質の高さをみるのは間違いではあるまい。

この年10月から開幕したスマックガール「JAPAN CUP」ライト級トーナメントにもエントリーされるが、12月の決勝まで勝ち上がった所でしなしさとこのヒールホールドに敗れて準優勝に終わる。この直後に女子ボクシングにも出場するなど、打撃系への傾倒が顕著であった渡辺に、新たな活躍の舞台が誕生する。

「Girls SHOCK」に託された野心

女子だけの新キックイベント「Girls SHOCK」がスタートしたのである。総合での女子格闘技の盛り上がりを受けて、当時、全日本キックボクシング連盟が立ち上げたものであった。エースとして目されたのは、連盟直轄のAJパブリックジムに所属するWINDY智美。

しかし、女子キックの層は薄く、興行は提携するJ-NETから派遣された彩丘亜紗子、ジェット・イズミでも足りず、総合系の選手を含めないと成立しないのが実情だった。渡辺は、SOD女子格闘技道場の薮下めぐみらと共にこの大会に参加。本職のキックボクサー大島椿と対戦。派手なパンチ合戦を展開して、判定勝利をもぎ取る活躍を見せた。

以降も3月の女子ボクシング4月5月にスマックに連続参戦。6月には再び女子ボクシングを挟んで8月には再びスマックと、三競技を股にかける形でほぼ月一回という脅威のハイペースで試合をこなしていく。

この疲れを知らないハングリーさが渡辺の身上。結果が出ようが出まいが、とにかく猪突猛進で次のステージに突進していく。そのアグレッシブさが、次第に彼女のステイタスをあげて行ったのも事実。この連戦の最後にあたる8月のスマックでは、ついにメインイベンターを務めるまでになる。

しかし渡辺の野心は、それで留まる訳ではなかった。
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