夏の甲子園を目指した高校野球の地方大会が全国で開催されている。高校野球を見続ける筆者が、とある地方大会の一シーンを描く。
甲子園は遙か彼方
どこにでもある地方球場 |
球場に到着したのは、第一試合の終了直前だ。試合は延長10回の末、サヨナラゲーム。最後の瞬間のみ立ち会った者には白熱した好ゲームだったかどうかは知る由もないのだが、試合終了後の球場周辺には、そこかしこにドラマの緒が垣間見られた。
佇む野球部員、涙ぐむ女生徒、勝利チームの敗戦チームへの挨拶、勝ってほくほくの応援団、次試合に備える野球部員などが入り乱れるさまは、この時期全国どこでも繰り広げられている、よくある高校野球の光景の一つに過ぎないのだろう。
私は目の前の風景をただそのまま見て、そのまま書いている。毎年あらためて思うのは、その一つ一つが新鮮でエネルギーに満ちており、極端に劇的でなくとも登場人物やその周りの人々の心情や人間模様を観察するだけでも十分に面白いということだ。
弱小高校のエース
入場券700円也 |
B高校側、一塁スタンドは、すでに応援団がいっぱいだ。三塁側スタンドに行く。ブルペンでA高校のピッチャーが投球練習をしている。おそらく彼がエースなのだろう。全然速くないストレートと、全然曲がらないカーブが低めによくコントロールされている。落ち着きのあるクレバーなピッチャーだ。彼が崩れずにどこまで辛抱できるかが「この試合」だろうと思った。