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【アジア杯】スタジアムで見たベトナムの今(2ページ目)

日本に完敗したものの、2位で準々決勝進出を果たしたベトナム。初めて国際大会のホスト国となり、さらに代表チームが快進撃を見せた。アジア杯の盛り上がりぶりから、現在のベトナムにおけるサッカーをみてみた。

執筆者:斉藤 健仁

日本戦なのに「UAE」コールが……

ベトナム建国の父・ホー・チ・ミン主席の写真を掲げるファンも(写真:斉藤健仁)
7月16日、いよいよ大一番の最終戦である日本戦を迎えた。月曜日で17時20分のキックオフとあってか、試合開始前はまだ空席も目立っていた。それでも、試合が始まってしばらくすると、スタジアムはやはり満員になった。

「日本の応援はすばらしいよ。特に音の出し方がかっこいいよ。僕らはまだまだだよね」と、運営スタッフの青年。どうやらベトナムはサッカーそのものだけでなく、応援スタイルに興味津々のよう。スタンドには今回はトランペット隊も登場した。

試合開始から10分、ベトナムが先制すると、スタンドは湧きに湧いた。報道陣も仕事そっちのけ(?)での大騒ぎ。その後すぐに追いつかれて落胆するが、気を取り直して声援を送っていた。

前半は2-1で日本がリードして終了。一方、ホー・チ・ミン市で行われていたカタール-UAE戦は1-0でカタールがリード。このままだとベトナムは敗退。まずは同点に追いつかなければと思った矢先、3-1と突き放されてしまう。

絶望感が漂いはじめた頃、思わぬ朗報が飛び込んでくる。なんとUAEが1点を返して同点に。そこから会場は一気に「UAE」コールに!

カタール-UAE戦の結果をテレビで確認する(写真:斉藤健仁)
報道陣も目の前の試合を忘れ、ネットの速報に釘付けになったり、電話をしてホー・チ・ミン市の試合のスコアを確認したりと、もはや「"他力"本願」へまっしぐら。

途中でUAEが2点目を入れたなど、情報が錯綜してちょっとした大混乱にもなった。日本とベトナムの試合は4-1で終わったが、会場のベトナム人はもう一方の試合の行方を確認するまでずっとそわそわしていた。記者席でPCのモニターをのぞき込みながら「まだ終わらないの?」「あと2分もあるの? 長すぎるよ」「心臓がばくばくするよ」とみな固唾をのんで試合の終了を待った。

そして、ロスタイムにUAEが2点目を決めた瞬間、ベトナム代表とスタンドのベトナム人たちは歓喜にわいた。

代表チームの進歩は経済発展とともに?

ベトナムの「進歩」はバンコクでも止まらないか(写真:斉藤健仁)
経済の発展と、人口の6割を占める25歳以下の若い世代のパワーは、ベトナムに急速な変化をもたらしている。「帰省するたびに、新しいお店ができていたり、ファッションの流行が変わっていたりするからビックリするわ」と、日本に留学しているベトナム人女性がため息をつくほど。

サッカーのベトナム代表が誕生した頃は、まだハノイの街にはほとんど観光客の姿もなく、タクシーよりもシクロの数の方が多いくらいだった。人々は英語で話すことはおろか、外国人と口をきくことさえもためらうような状態でもあったという。そんな街の路地で、子どもたちは裸足で薄汚れたボールを蹴っていた……。

それから10数年、国旗を胸に付けて試合に臨むほとんどが20~25歳の若者だ。「コン・ヴィンは20歳でベトナムの象徴となった。僕らのあこがれなんだよ」と、コン・ヴィンと同い年の青年はベトナム語ではなく流ちょうな英語で語ってくれた。

もともと頓着せず、変化に柔軟に対応していくのがベトナムの国民性という。この調子で代表チーム、そして応援スタイルも進化し続けていくか。そして、代表チームがベトナム経済発展の象徴になるのだろうか――。

ひとまず、7月21日にタイで行われるイラクとの準々決勝と8月22日に北京五輪予選をU-22日本代表と戦うU-22ベトナム代表に注目してみたい。



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