恐怖政治下のソ連を描く
スリリングな警察小説
連続殺人の存在を察した人民警察の捜査官レオは、自分と身内を危険に晒しながらも真犯人を追い続ける。旧ソ連を舞台にしたサスペンスフルな物語だ。 |
本作は実在の殺人鬼――1978年から1990年にかけて52人の子供を殺害したチカチーロから着想を得て書かれている。"理想の国であるソ連に犯罪は存在しない"という建前がチカチーロの逮捕を遅らせた事実(に対する憤り)こそが、著者にこの野心的な警察小説を執筆させたのである。ちなみに本作はロシアでは発禁処分にされているが、アメリカではリドリー・スコット監督による映画化が進行中。今年度の翻訳ミステリーを代表しうる傑作として、映画化を待たずに読むことを強くお勧めしておこう。
次のページでは『極限捜査』を御紹介します。