本格ミステリー界きっての異才・山口雅也
死者の甦る村で起きた連続殺人。犯人の目的は何なのか? 奇抜な設定とロジックが結合した名作中の名作。 |
山口雅也は1954年神奈川県生まれ。早稲田大学在学中から書評家として活動し、出版社勤務やゲームブックの執筆などを経て、1989年に『生ける屍の死』で小説家デビュー。パンク刑事の活躍する〈キッド・ピストルズ〉シリーズで人気を博し、1994年に刊行された『日本殺人事件』で第48回日本推理作家協会賞を受賞。『ミステリーズ』『マニアックス』『モンスターズ』と続く〈M〉シリーズ、世界の"偶然"を題材にした『奇偶』など、実験的な作品群で知られる個性派作家だ。そんな山口の最新刊『キッド・ピストルズの最低の帰還』は、13年ぶりに刊行された同シリーズの第5作(短編集としては4冊目)にあたる。
パラレルワールドの名刑事
動物園長とカバが殺された事件の真相は? 実業家の死体が石膏で固められた理由は? 斬新な設定で書かれた〈キッド・ピストルズ〉シリーズ第1作品集。 |
1991年に上梓された『キッド・ピストルズの冒涜』は〈キッド・ピストルズ〉シリーズの最初の作品集である。「『むしゃむしゃ、ごくごく』殺人事件」「カバは忘れない」「曲がった犯罪」「パンキー・レゲエ殺人」の4話が収められており、意外な動機が判明する「カバは忘れない」と異様な価値観をベースにした「曲がった犯罪」はとりわけ秀逸。本格ミステリー好きを自認する人には必読モノの1冊だろう。1993年に発表された『13人目の探偵士』は1987年に刊行されたゲームブック『13人目の名探偵』のリメイク版で、現時点では〈キッド・ピストルズ〉シリーズ唯一の長編。"猫"と名乗る殺人鬼によって、探偵たちが――マザー・グースの数え歌の見立てで――次々に殺害された。容疑者となった記憶喪失の"私"は、3人の探偵(探偵士)とともに捜査を進めていく。3つの推理を並置した構成がユニークな快心作だ。
次のページでも〈キッド・ピストルズ〉シリーズを御紹介します。