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ショートミステリーの旗手・蒼井上鷹(2ページ目)

蒼井上鷹はコンパクトなアイデアストーリーに定評のある新鋭。そのトリッキーな作品群を見ていきましょう。

執筆者:福井 健太

『ホームズのいない町』の奇妙な連鎖

『俺が俺に殺されて』
自分を殺した犯人の身体に取り憑いた「俺」の悪戦苦闘ぶりを描く異色サスペンス。かくも過酷な立場に置かれた主人公は前代未聞だろう。
蒼井上鷹は2007年に第2長編『俺が俺に殺されて』を発表しているが、これは"死者"が語り手を務める一風変わったサスペンスだ。バイト先のバーのマスター・別所に絞殺された「俺」の魂が別所の体に飛び込んだ。しかも別所は「俺」を陥れるために別の殺人を犯していたらしい。「俺」は自分を殺した罪で逮捕されてしまうのか? 追い詰められた主人公の奮闘ぶりを淡々と描く、奇想とブラックユーモアに満ちた野心的な怪作である。

最新刊『ホームズのいない町』は〈シャーロック・ホームズ〉シリーズをもじったタイトルの13編を収めた作品集。『二枚舌は極楽へ行く』『ハンプティ・ダンプティは塀の中』と同じように、本書にも"オチのある独立した短編"を繋げるためのギミックが使われている。それぞれの短編で描かれる悲劇には原因があり、その因果を辿ることで全編が一点に収束していく――という発想はシンプルなものだが、平易だからこそ軽めの短編群を縛るのには適している。ライトなアイデアによって短編を接続するという趣向には、アイデアストーリー(の量産)を得意とする著者の長所が生かされているのだ。

【関連サイト】
Webミステリーズ! 蒼井上鷹…東京創元社公式サイトの特設ページ。『ハンプティ・ダンプティは塀の中』の番外編が配布されています。
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