天才的"娯楽作家"
貴志祐介が出来るまで
子供の首吊り死体を発見した保険会社員・若槻慎二は、保険金を執拗に求める両親に疑惑を抱き始める。映画版も話題になった大ヒット作。 |
この著者をジャンルや手法で語るのは難しいが、極めてハイレベルな"決め球"を複数持ち、登板のたびに組み立てを変えるタイプだとは言えるだろう。リーダビリティの高い文章、奇抜なアイデア、巧みな人物造形などの配分を使い分け――1作ごとに趣向を大きく変えながらも――常に多くの読者を魅了してきた天性のストーリーテラーなのである。
熾烈な生き残りゲームと
現代版『罪と罰』
"火星の迷宮"に拉致された9人の男女は、主催者の仕組んだ生き残りゲームに身を投じていく。最後に残るのは誰なのか? |
2002年に刊行された『青の炎』は――『クリムゾンの迷宮』とは対照的に――心理を軸にした物語にほかならない。母親の元夫・曾根隆司が家に居座り、家族に暴力を振るうことに憤った高校生・櫛森秀一は、奇抜なトリックで曽根を(自然死に偽装して)殺害した。しかし警察の捜査は着々と秀一に迫ってくる。知能犯を描く倒叙ミステリーにして、濃密な青春小説にも成り得ている衝撃的な傑作だ。
次のページでは『硝子のハンマー』と『新世界より』を御紹介します。