職人作家ジャック・リッチー
「妻は遠くの友人に逢いに行った」という夫の証言は事実なのか? MWA賞受賞作「エミリーがいない」を含む17編を収めたリッチーのベストセレクション。 |
ジャック・リッチーは1922年ウィスコンシン州生まれ。ミルウォーキー教員養成大学を卒業後、海軍従軍中にミステリーに関心を持ち、終戦後には実家の洋裁店を手伝いながら短編を書き始めた。1953年にスポーツ小説"Always the Season"が「ニューヨーク・デイリー・ニューズ」に掲載されて小説家デビュー。翌年からは短編ミステリーを手掛けるようになり、1982年に「エミリーがいない」でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞を受賞したが、1983年に61歳の若さで死去している。
『クライム・マシン』と『10ドルだって大金だ』
銀行の金庫から余分な10ドルが発見され、思いがけない事態が巻き起こる。14編を収録したオリジナル作品集第2弾。 |
2006年刊の『10ドルだって大金だ』は(明らかに予想以上の)前作の好評を受けて編まれた第2作品集。銀行に現れた余分な10ドルをめぐる騒動を描く表題作、妻の殺害を企てた男の末路「妻を殺さば」など、著者らしい語り口と皮肉を存分に楽しめる1冊に仕上がっている。本書は『週刊文春ミステリベストテン』の第5位に選ばれたが、2冊続けての高評価は――フロックではなく――著者の力量の証明にほかならない。
次のページでは最新刊『ダイアルAを回せ』を御紹介します。