ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

ウッドハウスの快進撃

「20世紀最大のユーモア作家」にも関わらず、邦訳の機会に恵まれなかったP・G・ウッドハウス。その傑作群が(ようやく!)続々と刊行されています。

執筆者:福井 健太

世界的ユーモア作家
P・G・ウッドハウス

『比類なきジーヴス』
ユーモア小説の古典〈バーティー&ジーヴス〉シリーズ11編を収録。ウッドハウス・ブームの引き金となった1冊だ。
多くの小説や映画の始祖にも関わらず、歴史的意義が周知されていない――そんな作家はさほど珍しいものではない。いかに多くの遺伝子を遺したところで、その存在感は環境によって薄められてしまう。欧米では絶大な人気を誇り、ユーモア小説の大家として知られるP・G・ウッドハウスもその一人だ。国書刊行会の〈ウッドハウス・コレクション〉と文藝春秋の〈P・G・ウッドハウス選集〉が刊行されるまで、その知名度は不当なまでに低かったのである。

P・G・ウッドハウスは1881年にイギリスで生まれた。オックスフォード大学の名誉文学博士号を取得後、銀行勤めの副業としてユーモアミステリーを発表し、副業のほうが収入が多くなったために退職。専業作家として〈ジーヴス〉〈マリナー氏〉〈エムズワース卿〉などのシリーズを発表し、いずれも爆発的な人気を博した。日本に紹介されたのは戦前のことだが、1966年の『ジーヴス物語』以来――2005年に『比類なきジーヴス』が上梓されるまで――39年間にわたって単行本は刊行されなかった。その後の3年間で10冊が上梓されたと言えば、近年のブームの凄さは明らかだろう。

著者の単行本については次のページで御紹介します。
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