ミステリーは好きだけど、どぎつい描写があるのは苦手。おまけに食いしん坊! そんなあなたにオススメ。芦原すなお『ミミズクとオリーブ』シリーズをご紹介します。

名探偵は理想の妻ナンバーワン?

ミミズクとオリーブ
シリーズ第1弾。
このシリーズの語り手は、八王子に住む小説家の「ぼく」。ときどき庭にやってくるミミズクに餌付けしたりしながら、妻とふたりでのんびり暮らしています。その夫婦と友人の河田刑事がレギュラーのキャラクター。いわゆる安楽椅子探偵モノの連作短編集です。『ミミズクとオリーブ』『嫁洗い池』に続いて、第3弾の『わが身世にふる、じじわかし』が1月末に発売されました。

まず最初に収録された「ト・アペイロン」は春の出来事。冒頭で、「ぼく」の妻は、チラシ寿司を作っています。

チラシと言っても、酢飯の上に生魚を載せる江戸前のチラシではない。エビと野菜を煮た具を酢飯に混ぜ込むもので、バラ寿司とも言う。

という感じで料理の説明が必ずつくのが、このシリーズの特徴。登場人物が香川の出身なので、チラシ寿司の他にもイリコ飯や地元でしか売ってないお好み焼きソース、小さなカレイの干物「デビラ」など、素朴で美味しそうな讃岐名物が登場します。
嫁洗い池
シリーズ第2弾。
妻は夫や河田の料理に対する細かいリクエストに、いやな顔ひとつせずに応える。とてもデキた女性です。そんな彼女は一を聞いて十を知るような明晰な頭脳の持ち主もであるので、河田は担当する事件が行き詰ると、相談にやってくるのでした。ところが、優しくて上品な妻は、残酷な話が大嫌い。もし補足で調査したいことがあっても、絶対に自分では現場に行きません。そこで、ちょっと間の抜けた夫が助手を務める、というパターン。事件を説明するときの、夫と河田の脱線しまくる会話(妻がいつもツッコミを入れる)もお約束です。

今回の新刊で妻が解決するのは、殺された詩人の遺言状と消えた凶器の謎(ト・アペイロン)、側に毒入りリンゴが置かれた死体の謎(NY・アップル)、たてつづけに行方不明になった老人と奇妙な暗号の謎(わが身世にふる、じじわかし)など。いずれも話を聞いただけで、大体のことはわかってしまう。
わが身世にふる、じじわかし
シリーズ最新刊。相変わらず讃岐の郷土料理が美味しそう!
料理上手で、夫があまりお金を稼げなくても、甘ったれていても、キーキー怒ったりしない。おまけに名探偵。妻は怖いくらいデキすぎです。そういう意味ではリアリティはない。トリックも、どこかで読んだことがあるようなものをアレンジしているので、斬新さはあまりありません。

でも、刺激が強いばかりが面白いミステリじゃないわけで。毎日のごはんのように飽きず、温かいお茶のように読むとホッと和める。そんなシリーズです。続刊も楽しみ!



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