真夜中のプールで本多孝好『MISSING』
冒頭に収録されている「眠りの海」は少女と教師の恋を描いた作品で、本多孝好のデビュー作。 |
小学六年生の夏。家族はみんな海外に行ってしまい、〈僕〉は4歳年上の従姉・ルコと留守番をすることになりました。退屈だからと高校をやめ、気ままに旅をするルコは、親戚のあいだでも変人でとおっている。でもその奔放さと、深い瑠璃色の瞳が魅力的な女の子です。終業式の早朝、〈僕〉はルコの無謀な冒険につき合わされ、学校のプールに忍び込みます。ひとしきり泳いで、プールサイドで寝そべって、いろんな話をして。二人はかけがえのない時を一緒に過ごしました。
それから数年後。しばらく会わなかったルコと〈僕〉は再会します。ところがルコの雰囲気は変わっていました。真夜中、〈僕〉はルコと思い出のプールに行きます。そこで聞かされたのは、苦しい恋の話。そしてまた数年が経ち……。
本多孝好版「君がいた夏」は、瑠璃色の瞳を持つ少女という設定がロマンティック。
ブレイク・ハート・ヒルでトマス・H・クック『夏草の記憶』
30年前の痛ましい事件。被害者の少女に恋心を抱いていた少年が胸に秘めていた事件の真相とは……。驚きの結末! |
舞台は、アメリカ南部の小さな町・チョクトー。主人公は成績はいいけれど内気な少年・ベン。ある年の夏、町のハイスクールにケリーという名の少女が転校してきました。輝くばかりに美しく、知的で大人っぽいケリーに、ベンは惹かれます。一緒に学校新聞の編集をしたり、ダンスを踊ったり、ブレイクハート・ヒルと呼ばれる丘の由来を調べたり。ケリーと過ごす夢のような日々。ところが、その翌年の5月、ブレイクハート・ヒルである出来事が起こって……。
あんなことが現実に起こったというのは、ケリー・トロイがあんな姿で人生を終わることになったというのは、信じられないことだった。白いドレスは泥に汚れ、髪の毛には草の葉やら枯れ枝やらが絡みつき、伸ばした右手は地面を引っ掻くように指を曲げて、なおも必死にあの急斜面を這い登ろうとする姿で――
物語は長じて町の医師になったベンが、現在と過去を往き来しながら語るという構成になっています。初恋の痛み、事件後同級生たちがたどった人生、閉鎖的な田舎町の人間関係、南部の歴史の暗い側面。さまざまな要因が複雑に絡まりあった出来事の真相が、少しずつ解き明かされていきます。
少年の心理や匂い立つような風景を繊細に描き出す美しい文章と、ミステリーとしてのおもしろさが融合した、類稀なる傑作! 未読のかたは、ぜひ驚愕の結末を堪能してください。
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