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感動のロボット小説BEST5(3ページ目)

2009年10月に映画「ATOM」が公開予定。『鉄腕アトム』をはじめとして、なぜロボットの物語は人間の心をとらえるのか? ロボットを題材にした小説を集めてみました。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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3.人間と異なるものと共存できるか山本弘『アイの物語』

アイの物語 (角川文庫)
<DATA>タイトル:『アイの物語』出版社:角川書店著者:山本弘価格:860円(税込)
山本弘の『アイの物語』は、“僕”が少女そっくりな戦闘用アンドロイドに捕えられるシーンから始まる。

21世紀前半、人類は意志を持ったマシンに敗北。数世紀後の現在、世界人口は2500万人に減少していた。“僕”はコロニーを渡り歩き、ヒトが繁栄していた時代の話を語って聞かせる語り部。アイビスと名乗ったアンドロイドは、語り部である“僕”に物語を聞かせるため、捕まえたのだという。

アイビスが語るのは、人間とマシンの交流を描いた7つの物語。マシンは敵だと教えられてきた“僕”は、“プロパガンダではないか?”と身構えながらも引き込まれていく。そして最後の「アイの物語」で、人間とマシンの真実の歴史が明らかになる。

7つの話、どれも物語が好きな人なら胸が熱くなると思うけれど、特に心に残るのは第6話の「詩音(しおん)が来た日」。詩音は、介護用に開発されたアンドロイド。どんな重労働でもこなす代わりに、コミュニケーションスキルはゼロだ。そんな詩音が教育係の介護士や老人たちとの交流を通して成長する。といっても人間に似てくるのではない。アンドロイドだからこそできるケアを発見するのだ。

アンドロイドは人間そっくりなのに人間じゃない。究極の他者だ。誰でも自分と異なるもののことは理解できない。だから争うこともある。でも、自分と異なるものが存在することは、救いにもなりうる。そう思わせてくれる一編だ。

もしも、ヒトが滅んでロボットしかいなくなったら……。次ページで紹介するのは、人間がロボットに何を託してきたかを描いた物語。

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