INDEX
・芥川賞その1(7/8掲載)・芥川賞その2(7/15掲載)
・直木賞その1(7/7掲載)
・直木賞その2(7/9掲載)
・直木賞その3(7/14掲載)
7月15日、第139回芥川賞・直木賞の選考会が開かれた。芥川賞は楊逸「時が滲む朝」、直木賞は井上荒野『切羽へ』に決定。初の中国人芥川賞作家の誕生が話題を呼びそうだ。
第139回芥川賞受賞作
<DATA>タイトル:『時が滲む朝』出版社:文藝春秋著者:楊逸価格:1,300円(税込) |
念願かなって、秦都大学に入学。浩遠と志強は相変わらず仲良く、未来を夢見て勉強に励んでいたが――。1989年、天安門事件が起こり、直接は巻き込まれなかったものの、ふたりの運命は大きく変わってしまう。
天安門事件から香港返還、北京五輪の招致が話題になった2000年までを、日本に渡ってからも理想を捨てられない浩遠の視点で描く。彼の青春を象徴する曲が尾崎豊の「I Love You」というところも興味深い。
第139回直木賞受賞作
<DATA>タイトル:『切羽へ』出版社:新潮社著者:井上荒野価格:1,575円(税込) |
という一文で『切羽へ』は始まる。舞台は長崎県にある島。かつて大きな産業が栄え、そして衰退したところで、廃墟が多い。主人公の麻生セイは、小学校の養護教諭。小さな丘のてっぺんに建っている家に、画家の夫とふたりで暮らしている。ある年の3月、セイの勤める学校に東京から新任の男性教師・石和聡がやってくる。
夫婦関係は良好。性的にも満たされているのに、セイは射るような目をした石和に惹かれていく。石和も、セイに対して不穏な態度をしめす。最後に彼らがいたる“切羽(きりは)”とは? 大人の男女の秘めた激情が、もうちょっとであふれ出してしまうギリギリのところを描いた恋愛小説。
前回候補になった『ベーコン』同様、食べ物の描写も読みどころ。特に石和が作る筍汁はおいしそうだ。