ベスト10ランクイン作品を一覧すると、堂々、順当トップの「セカチュー」をはじめ、『冷静と情熱のあいだ』『いま、会いにゆきます』『きみに読む物語』『風と共に去りぬ』『東京タワー』『センセイの鞄』と6作が映像化されています。ビジュアルがあることで、現実の恋を投影しやすいですもんね。また、作品の内容としては、死別をはじめ、身体的に隔てられても変わらぬ思いを描いた作品が強さを発揮しました。離れている時の重みに磨耗しない思いこそが、理想の愛――という皆さんの思いが伝わってきます。
■「世界の中心で愛をさけべない」方も楽しめる作品をピックアップ■
さて、投票してくださった方の中には、もちろん、男性もいらっしゃったんですが、私がもし男だったら、ベスト10に上がっているような作品を恋人から贈られたら、結構、プレッシャーかかるなぁと感じてしまいました。だって、「理想の純愛」って、ちょっとキツクないですか?そこで、あくまで、想像の範囲内なんですが、「恋する男」を等身大で描いた作品を、いくつかピックアップしてみました。狭義においては「恋愛小説」というジャンルをちょっとはみ出してしまう作品もありますが、そんなに簡単には世界の中心で愛を叫べない男性諸氏の方も、ぜひ一度手にとってみてください。
★『春、バーニーズで』吉田修一 文藝春秋
主人公は、恋の季節を過ぎて、少なくとも表面上は、きわめて穏やかな人間関係に埋没している三十代、妻子持ちの男性。もちろん、過去にはいろいろあったし、今も実は、いろいろある。ある日、彼は、何かに突き動かされるように無断欠勤してしまう・・・芥川賞作家である著者が、主人公のもやもやした渇望に共感を覚える人も多いのでは?
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★『君たちに明日はない』垣根涼介 新潮社
主人公は、33歳、企業のリストラを請負う会社の社員。仕事は、キツイけど、やりがいもある。そして、女性との出会いも・・・。ビジネス・エンターテインメントですが、主人公と年上のパートナー(彼がリストラを勧告したうちの一人)との恋が秀逸。身体も心も相性抜群なんだけど、どちらもそれが永遠に続くとは限らないことを知っている・・・実際は、こんなもんじゃないのかなぁ。
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★『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ 河出書房新社
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文藝賞受賞作にして、芥川賞候補作。強烈なタイトルですが、内容は、19歳の男性と39歳の女性の危うい恋の行方を描いたしごく真っ当な恋愛小説。相手のちょっとした仕草や肉体の一部に、ものすごく引かれたり、人間的な弱点をみつけて、いやになってしまったり、女性が書いたものとは思えないくらい恋する男の子の揺れ動く感情や欲望が、みごとに描き出されています。
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※この作品は、ガイド記事でも紹介しています。
●共作も含めると、3作品がベスト10にランクイン。やっぱり、強い、恋愛のカリスマ・江国香織さん。最新長編の『赤い長靴』を、ガイド記事で紹介しています