男の夜遊び/ダイニング&レストラン&カフェ紹介

東京おでん専科 vol.01 浅草『お多福』(2ページ目)

吐く息も真っ白く煙る冬の夜は、ホクホクと湯気立つ「おでん」が無性に恋しくなる。ということで、今回から3回に渡り専門店ならではのこだわりをいくつも重ねた極上のおでんをご紹介。東京おでんの聖地を巡ります。

大脇 克浩

執筆者:大脇 克浩

男の夜遊びガイド


「おでんは具と出汁が相互に旨味を出して初めて
美味しくなるもの」

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下ごしらえがされたおでんタネ。鍋で出汁に出会い完成となる
朝は市場での買い付けやタネの仕込みから始まるお多福のおでんは、皿の上で華々しく輝く。大阪から移り住んだ初代が作り出した出汁は、日高昆布とカツオ節、白醤油と合わせ調味料等を使用した透き通った関西風で、最初はあっさりとした印象が口に広がるが、しばらくすると素材そのものの味を忘れるほどの旨味が押し寄せる。

むしろしっかりとした味付けで、タネの味を出汁でうまく包んだコク深い味わい。思わず日本酒や焼酎に手が伸びる。

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出汁は日高昆布とカツオ節、白醤油と合わせ調味料...薄口だがコク深い
「おでんは具と出汁が相互に旨味を出して初めて美味しくなるもの。本当に美味しいタネなら出汁に入れずにそのまま食べて、素材そのものの味を楽しんだ方がいい」と言う店主・舩大工栄氏のモットーは、タネの産地を決めずその時に最良の食材を仕入れ、タネは全て別々に仕込み「おでん鍋は最後の完成品」であること。

魚介類からは旨味、練り物からは甘み、がんもどきや油揚げからは脂身、それら全てが合わさり旨味と成す。大根や豆腐といった誰もがその味を知るタネを食せば、その出汁とタネが鍋の中で渾然一体となった旨味の違いがつぶさに分かるはず、そんなおでんが今日も訪れる客たちを笑顔にする。
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