『逢びき』に見る人妻ローラの恋愛
1945年/イギリス映画/上映時間:86min/デヴィッド・リーン監督作品『逢びき』 |
いく度か会ううちに互いに惹かれあい、唇を交わすまでに……。しかし、ある出来事をきっかけに互いに自責の念が沸いて、アレックスは海外に赴任すると語ります。最後の木曜日、アレックスと別れたローラはひとりホームに立つうち列車に飛び込みたい衝動に駆られますが、思い止め帰宅します。そしてラストシーン。夫が妻(ローラ)にそっと、いたわるように「遠くへ行っていたんだね。帰ってきてくれて、ありがとう」と言います。
「恋はするものではなく堕ちるもの」と言われます。偶然の出会いから芽生えた「恋心」は膨らみ、ローラの心の中を支配してゆきました。恋すると人は美しくなるものでしょう。長年連れ添った夫は妻の変化を見逃してはいなかったのです。映画の後日談は語られませんが、以前より美しくなった妻を夫が惚れ直したのだと信じます。
『旅情』に見る働く独身女性ジェインの恋愛
1955年/イギリス映画/上映時間:100min/デヴィッド・リーン監督作品『旅情』 |
翌日ジェインは着飾って彼の骨董屋に出かけますが、彼の店に青年が店番をしていました。青年はレナートの息子であることを聞いたジェインは彼の前から姿を消そうと考えます。滞在しているホテルにジェインを追ってきたレナートは妻と別居していると告げ、それから夢のような数日間を楽しみます。
思いが募るほど「このままでいたら別れられなくなる」ことを悟ったジェインは思い出深いヴェニスを後にします。
一つの恋は終わりましたが、二人には生涯忘れることのできない切ないけれど、素敵な思い出になったことでしょう。
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