発明家
先生:誰がアート・オブ・ノイズを・・・ |
Daft |
研究生:
となると、活動休止前のルーツ・オブ・エレクトロに括られる時代のArt Of Noiseになるのかなぁ。あのあたりだとすると、現在形の王道ニューエレクトロを楽しむ、一般的な若者の感覚とは離れているのかなぁ・・・と思います。音色はどうあれ、ニューエレクトロの必須条件である親しみやすいメロディラインを持つ音ではないですし。僕がバンバータを「粋だねぇ~」と表現したように、リスナー体験が“ひと回り”してからでないと聴くのはキツいかもしれません、むしろ90'sテクノを昔から愛する人々へオススメしたい音だなぁと思っています。みんな意外とスルーしているところなだけに。かっこいいですよ~♪
先生:
トレヴァーが絡んでいる割には、確かにメロディは希薄ですね。
研究生:
余談極まりないですが、Perfume「おいしいレシピ」のリズムトラックにも、このようなルーツオブエレクトロから派生したゲットーテック系のフレイヴァーを感じています。もちろん随分と聴きやすくなっていますが、あれは不良のレシピではないかと(笑)。
ただしこれらはすべて、当時の時代背景などを無視したイメージでしかありません。
先生はArt Of Noiseのどの要素に注目して、「発明家」と評しておられるのでしょう?すごく興味があります。おそらく博士も同様の印象をお持ちだと思いますし。
先生:
当時のサンプラーの可能性と最大限に生かしたArt Of Noiseですが、それらは今から見れば、技術的には黎明期のものでしょう。センスは抜群にイイと思いますが。僕の中では、「Beat Box」に代表される破壊的なドラムが中心に楽曲が成り立つ事が、発明でした。 だから、日本にもArt Of Noiseっぽい事を試みる人たちがいましたが、あの破壊力は感じませんでした。
研究生:
僕もArt Of Noiseを心地よく感じるのは、あのドラム音だからです。そして、先生が「Beat Box」を聴いた際に感じた“ドラムの音だけで楽曲成り立つんだ!”という驚きは、僕ら世代ではテクノに感じた衝撃です(どちらも、実はドラム音ではないということも含めて)。昔、テクノのイベントに行った際、音楽の話題になった時によく話していたのも「誰の音が好き?」ではなく、「誰のキック音が好き?」でした。
でも、ニューエレクトロを聴く人たちにその感覚はあるのかな?と。“あの曲のキックのアタック感がヤバいんだよ~♪”という音キチは、あまりいなさそう・・・。そういう意味でも、Art Of Noiseはニューエレクトロ登場以前のピュアテクノから発展したテクノ系サウンドのルーツとしての立位置なのかなと。
ただし、ニューエレクトロのルーツであろうDaft Punkは、キック音が最高に気持ちよかったんですが・・・。ニューエレクトロはそこをもう少し突き詰めて欲しいなぁと思ったりはします。リズム面でちょっと物足りなく感じたりもするんですね。音圧高いのにキックが細いぞとか。