テクノポップ/YMO関連

Stop Rokkasho, Radioactivity(2ページ目)

坂本龍一が中心となったプロジェクト「Stop Rokkasho」から多くの楽曲が配信されています。クラフトワークも終に「Radioactivity」で参加! この曲、オリジナルはそれほどメッセージ色が強くなかったんですよね。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

変化した「Radioactivity」

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Minimum-Maximum
今回、クラフトワークが提供したのは、テーマ的にもどんぴしゃの「Radioactivity」。Warsawでのライヴ・ヴァージョンですが、これは2005年に発売された2枚組ライヴ・アルバム『Minimum-Maximum』にも収録されているものと同じだと思われます。

Radioactivity
この「Radioactivity」のオリジナルは、彼らの1976年のアルバム『RADIO-ACTIVITY』に収録されています。ただ、この時点の「Radioactivity」の歌詞には、強い反原発のメッセージは表面化していません。歌詞を聴く限り、放射能に対して肯定も否定もありません。当時、この歌は原発賛成との誤解が生まれたほどです。

アルバムの邦題は『放射能』ですが、実際「RADIO-ACTIVITY」と表記していることからも、「放射能」と「ラジオ活動」のダブルミーニングと思われます。収録曲も「Geiger Counter(放射能測定器)」「Uranium」といった放射能関連と「Antenna」「Radio Stars」といったラジオ関連で構成されています。クラフトワークならではのユーモアを感じます。

THE MIX
1991年に発売された『THE MIX』は、クラフトワークの新しいアレンジでのミックスしたベスト盤です・・・と説明してしまうと、このアルバムの本質を見逃すでしょう。これは、クラフトワークをより普遍にするための再構築芸術です。その後の彼らのライヴの完成度もこの再構築が大きく貢献しています。その中でも、大きくオリジナルより再構築されたのが「Radioactivity」です。サウンドはよりタイトかつクリアになっていますが、それ以上に歌詞はより明確なメッセージが込められます。最初はチェルノブイリや広島などの放射能の被害を受けた地名から始まり、以前無かった「Stop」が加わり「Stop radioactivity」と意思表示がされています。

発売中止事件

2006年12月に、東芝はEMIをグループから切り離し音楽事業から撤退するという発表がありましたが、クラフトワークのアルバムは東芝EMIからのリリースからされています。

カヴァーズ
東芝EMI(親会社は原発ビジネスも手がける)は以前、原発批判の歌詞を含んだRC SUCCESSIONの「サマータイム・ブルース」を収録したアルバム『カヴァーズ』(1988年)を発売を直前になって取りやめて、結果アルバムは別レーベルからの発売となったことを考えると、クラフトワークの「Radioactivity」(特に『THE MIX』)を問題なしとしたのは面白いです。やっぱり、過剰反応はミスとの認識が東芝サイドにあったのでしょうか? 音楽ビジネスは他の配慮や圧力なしで展開できることは、アーティストにとってもレーベルにとっても望ましいと思います。親会社が原発ビジネス(いや、エネルギービジネスと呼びましょう)をやっている事を単純に否定的に捉える必要はありませんが、グループから抜けたのは正解でしょう。
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