テクノポップ/アーティストインタヴュー

Dr.Shingoさん、何故ドクターなの?(2ページ目)

ドイツのForteからデビュー、スピード感あふれるトランシーな最新作『INITIATION』を10月11日にドロップするDr.Shingoさんにインタヴュー。でも、何故ドクターなの?

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

ドイツのレーベルからデビュー!

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Dr. Shingo's Space Oddessy
――2002年リリースのドイツのForte Recordsからの『DR.SHINGO'S SPACE ODDESSY』がデビュー・アルバムだと理解しております。実は、デビュー・アルバムは輸入盤をリリース直後にちゃんと買いました。デモテープを送った結果でのデビューだと聞きましたが、かなりの数のレーベルに送ったのでしょうか?

聞いて頂いてありがとうございます!ご指摘の通り、『DR.SHINGO'S SPACE ODDESSY』が僕のデビューアルバムです。

アメリカから帰国して東京に住み始めたのが99年後半で、最終的にForte Recordsからアルバムリリースのオファーを貰ったのが01年頃だったと思います。その3年間は普通に週5、6日アルバイトを8時間こなし、夜寝るまでの数時間は徹底的に音楽制作をするという生活を送りました。最終的にForte Recordsからオファーを貰うまでにデモテープを送ったレーベルの数は・・・確か3つか4つ位だったと思います。一つはForte Records、他にはMuller Records、Low Spirits…あともう幾つか…その位です。勿論、日本でも有名なDJの方々には図々しくもデモを渡していたし、たとえ貰ってもらえなくても渡す努力はしていました。あと、パーティーでプレイする為に来日したDJ達にもアポなしでアタックしたりもしましたね。

溜まったデモ曲を自分なりに解析して、「このデモならこのレーベルがいいかも」と目星を付けた上でデモを送っていたので、結果的には多くのレーベルにデモを送らなくても良い結果になったんだと思います。何故Forte Recordsをデモの送り先に選んだかと言うと、当時人気があったUral 13 Diktatorsというアーティストが好きだったからからです。レコード屋さんの店員さんに、どのレーベルが良いレーベルかアドバイスを貰ったりもしましたよ。

――デビュー作を聴いていると、ドイツ色が強いエレクトロという印象です。それも、かなりポップでアルバムも宇宙コンセプトな曲が多いですよね。アルバムを作るにあたって、コンセプト中心に作られたんでしょうか、それとも集めていくと自然とそうなったのでしょうか?

まず自分のテクノの原体験に寄る所が大きかったと思います。先程お話した通り、僕のテクノの原体験はクラフトワークに代表される様なジャーマン・ロックサウンドにあります。

ジャーマン・ロックからテクノとは…を自分流に勉強していく内に、やっぱり好き嫌いが出て来ました。テクノなら何でも良いというのではなく、やっぱりシンセサイザーが多くフィーチャーされているメロディアスなトラックに興味を示しました。僕がデモトラックを作っていた当時は99年から2000年の頃だったので…多分ハードミニマルが隆盛を極めた頃だと思います。アダム・ベイヤーに代表されるようなパーカッシブでアグレッシブなサウンドが流行っている時でしたから、当然の様に僕もハードミニマルなトラックの製作にチャレンジしました。

が、どうやってもハードミニマルにならなかったのを覚えています(笑)。やはり自分の音楽的なバックグラウンドはメロディックな音楽なんだからそれで行こうじゃないか、と決心した時からエレクトロっぽいトラックを作る事に専念するようになったと思います。

宇宙的なコンセプト…という点ですが、これは自分の中で「2001年宇宙の旅」の様な、もう今の時代からしたらレトロな宇宙観をサウンドで表現してみた部分と、レコード会社が曲をアルバム用にコンパイルしている時に浮かんだイメージとが重なったお陰だと思います。アルバムのタイトル『DR.SHINGO'S SPACE ODDESSY』はクリスチャンが命名しました。最初、そのタイトルを告げられた時に「余りにもダイレクト過ぎない?」とちょっと恥ずかしさも覚えましたが、結果的には成功しました。

ポップな…というご指摘は、メロディアスな曲が好きだったし、当時はニューウェーブ等からも影響を受けていたからだと思います。

――Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」は見事な解釈がされているなーと思いました。この曲自体には思い入れはあったのでしょうか?

まず、アルバムにカヴァー曲を入れようという提案をクリスチャンがしてきました。クリスチャンは僕より一歳年上なだけの同年代だけあってお互い知っている様なバンドや曲が候補に挙がり、その中にニルヴァーナがありました。最初、クリスチャンからは違う曲を提案されましたが、僕は「Smells Like Teen Spirit」がピンっと来たのでそのカヴァーをする事に決めました。

僕にとっては青春ど真ん中の曲だし、当時80年代サウンドがリバイバルの中、90年代の曲をカバーするのは面白いんじゃないかと思ったからです。

「Smells Like Teen Spirit」は世界中のバンドがオフィシャル/非オフィシャルを含めてコピーされまくっている有名曲で、どうやったら世界の誰もがやっていないカヴァーが出来るか、と頭を捻った末のアレンジです。後、「Smells Like Teen Spirit」の歌詞は訳してみるといわゆる若者の有り余ったパワー感やアナーキーな感じを強く感じますが、どこか刹那的な物も感じました。カヴァーではそういった悲観的な感情部分にスポットを当ててアレンジをしたんじゃないかと思いますね。
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