テクノポップ/海外のテクノポップ

80'sディープ・スウェーデンの探検(4ページ目)

『Retronics』から辿る80年代スウェーデンのシンセポップ・シーン。Japan、ウルトラヴォックス、クラフトワークのメンバーがプロデュースを手がけたバンドに、New Musikの再来まで堪能してください。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

New Musikの再来、Nasa

The Bird
収録の「The Bird」は、1987年にシングル・リリースされています。『The Bird』のB面で、バグルズの『想い出のエルストリー』のカヴァーをしています。バグルズのカヴァーは多いですが、これを選ぶのは渋い。

Nasaは僕の一押しスウェーデッシュ・テクノポップなんですが、出会いは・・・

アメリカにLexicon Magazineというニューウェイヴ~シンセポップを専門とした雑誌があって、時々一緒にCDサンプラーが付いてきました。そのサンプラーに収録されていたNasaの「Back To The Square One」という曲を聴いて、完全にノックアウトされました。タイトルからも想像できる、ヴォコーダーとシンセを駆使した懐かしい未来的(レトロ・フューチャー)超ポップ・チューン。

Remembering The Future
この曲を収録したアルバム『Remembering The Future』は、スウェーデンのレーベルMomento Materiaと先述のLexicon MagazineのDivisionであるNinethwave Recordsからリリースされています。

Nasaというバンド名をそれまで聞いたことがなかった僕は、てっきり90年代以降に現れたネオ・シンセポップ系の若い人達だと思っていました。新しいバンドにしては、円熟味のある凄く練られたサウンドを構築できる凄い奴らだ。New Musikのサード・アルバム『WARP』の2000年版と言っても誉めたり無い、マスターピース。聴いたテクノ好き仲間が、全て絶賛しました。

Nexterday
Back To Square One
記事「外国のロシア構成主義展」で解説しましたが、アルバムはロシア構成主義のエル・リシツキーへのオマージュと推測されますが、2000年リリースの2枚のシングルもロシア構成主義路線です。『Back To Square One』の方には、ダフトパンクに負けじとフィルターディスコ・ヴァージョンもあります。

Echoes Down The Hall
調べていくと、Patrik HenzelとMartin Thors(Jonas Zachrissonも過去に在籍)からなるNasaは、1983年にデビュー・シングル『Paula』がスウェーデンのトップ10チャートにもランクインした超ベテランと判明。Momento Materiaから1998年に『Echoes Down The Hall』という80年代の軌跡を辿るベスト・アルバムがリリースされています。こちらは、New Musikというよりもウルトラヴォックス風ですね。

Musik
Nasaと同じ編成ですが、Henzel & Thorsというユニット名でアルバム『Musik』(1989年)もリリースしています。全てスウェーデン語で歌っています。Nasaほどエレポップしていません。

二人とも、90年代はNasaとして主だった活動をしていませんでしたが、Partikはコマソン関係の仕事をしており、その間に蓄積したソングライティングの向上が11年のブランクを経て一気に爆発したようです。小ヒットですが、Amazon.comでは一時、Emerging Dance & DJ General Chartにて2月に1位を獲得しました。

◆Nasa - In The Mist Of Time

では、次回は現在のスウェーデンのエレクトロ・シーンへと。
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