新作『lust』について

――デビュー・アルバム『unrest』(1998年)から『opa*q』(1999年)、『red curb』(2001年)、リミックスアルバム『レッド・カーブの思い出』(2001年)と割とコンスタントにアルバムをリリースされてきていますが、今回リリースされた『lust』は、実に4年ぶりですが、4年間十分に時間をかけて作られていたのでしょうか?

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01. long time
02. joy
03. lust
04. grief & loss
05. owari no kisetsu
06. come here go there
07. after joy
08. last night
09. approach
10. first period


いいえ。実質的には去年の約1年で作りました。元々自分の作品を作るペースは大変遅いんです。『red curb』をリリースするまでは、名前を出さない音楽仕事をやるかたわらで、のんびりと自分の作品を作っていたので、ある意味で無理のないバランス感が取れていたと思います。しかし『red curb』リリース以降は、名前を出す仕事のオファー(リミックス、プロデュース等)しか来なくなったので、責任上、音楽を作る作業が遅くなった事が原因だと思われます。ただ、2~3年前にこういうアルバムが作れたかと言えば、やはり作れなかっただろうと思っています。

――ジャケットは古い瓦屋根の住宅地の写真・・・どこか郷愁感がありますが、これは何処の風景なんでしょう? また、イメージとして作り上げたかったものとかはあったのでしょうか?

この写真は、スズキスキー(ex.Fantastic Explosion/彼は写真家ではなくて音楽家です)というアーティストが個人的に撮影したものです。今回は頼んで使わせてもらいました。僕自身はこの写真の場所は知りませんし、京都にこういうロケーションはありそうで、実はあり得ないんです。この写真を見て郷愁感を持つのは、都会に住んでいる人ではないかと思います。僕にとっては、すごくリアリティがあったりします。こういう場所から、僕の音楽が聴こえてくるのも、いいんじゃないかと。僕なりのリアリティがあるからこういう組み合わせが出来るんじゃないかと考えています。

――ハラカミさんの作られるサウンドには、独特の触感があると思います。北欧には北欧の触感があったり、やはりどこか日本の触感なのかなーと。水中から生まれたような音・・・しかし、驚いたのは、ハラカミさんの京都のスタジオにある機材群はめちゃめちゃ安いものばかりだと。この辺の秘密について教えてください。

秘密も何も、そもそもお金が無かったからです。"スタジオ"と言えば聞こえは良いですが、自分の部屋に機材が置いているだけです。音色から想起させる雰囲気については、僕自身が考えた…というよりも、機材から僕が導き出したモノでしかありません。そこから快楽性を抽出した結果なんだと考えています。機材に関してですが、色んな事が出来る高価な機材からしか良質なモノを作る事が出来ないわけではないし、常に新たなテクノロジーこそが新たな表現を生み出し続けるわけでもありません。僕の使い続けているローランド社の音源モジュールでも、組み合わせ次第で十分色んな事が出来ると考えています。常に新しいソフト/ハードを開発/販売し続ける事で、お金を発生させなければならない会社からすれば、僕のようなやり方は、あまり嬉しくないのは、想像に難くありません。

――10分を超える2曲目の大作「joy」は、最初から長いトラックを作るつもりだったのでしょうか? 聴いていて、実際不思議にそれほど長く感じないのは、やはり、風景が変わっていくからでしょうかね。

「joy」は大作を作ろうと思っていたわけではありません。作っていたら、そうなっただけなんです。僕自身作り終わった後に、計ってみたら10分あった、というだけです。「joy (10min)」という文字情報を受け取った後で、そう考えながら聴くから"大作"として認識してしまうのではないでしょうか? 風景の移動が時間の移り変わりを想起させやすいとは思いますが、実際にそういう事を想定しながら作っていたわけではありません。「joy」という曲は、作り終わってしばらくして、「この曲は「joy」だな」と思えたから、「joy」と命名したんです。屁理屈っぽいですかね。