
ところで、坂本龍一のファースト・ソロ『千のナイフ』ですが、冒頭のヴォコーダーによる台詞は、毛沢東が作った詩の朗読、と言うのは御存じですよね。(坂本龍一は毛沢東に著作権料を払ったのでしょうか?)と、なれば「中国女」という楽曲のタイトル命名者が一体誰か、容易に推定できるのではないでしょうか。
それは置いておくとして、「La Chinoise 」。この映画についての個人的な感想は、とにかく色彩感が良いです。たとえゴダールの政治的メッセージが解らなくとも、映画の鮮烈な色彩感覚には唸らせるものがあります。また、「La Femme Chinoise」の間奏に、この映画からのセリフが挿入されているのは有名な話。実は、僕がこのヴィデオを購入した理由は、一体、この映画のどの部分で、例のセリフが使われているのだろう、と言う疑問からです。
僕、フランス語は、さっぱり判らないんですが、数回見た限りでは、布井智子嬢が喋る一連のフレーズが、そのまま聞こえる部分は無いように感じました。ひょっとして布井嬢が喋っている内容は、ある特定のシーンのセリフをそのまま持って来たのでは無く、あちこちの場面からのセリフを寄せ集めているのかも知れません。(と、言うか、ライヴでオープニングを飾るあの有名なフレーズさえ、何処にあるか判別困難!)
いずれにせよ、布井嬢のセリフを選定したのは、「La Chinoise」の内容が理解できる「中国女」のタイトル命名者である可能性が濃厚です。
ところで、「La Femme Chinoise」の歌詞(クリス・モスデル作詞)には「Susie Wong and Shanghai dolls」と言うくだりが出てくるのは、みなさんご存知かと。
また、ティン・パン・アレイの『Yellow Magic Carnival』に収録されている「Hong Kong Night Sight」の歌詞(松任谷由美・作詞)にも「心優しい彼女の名はSuzie Wong」と言う一節があります。この曲は、松任谷由美が『水の中のASIAへ』でカバーしているので、むしろそっちの方が有名かも知れません。
また、横山剣(クレイジー・ケン・バンド)のアルバム「狂剣的世界」の「スージー・ウォンの世界」にも「湾仔あたりは、スージー・ウォンの世界」と言う表現があったり。

映画を観れば納得できると思いますが、人々の汗が喉伝い、活気が溢れる町並み、南シナ海を遊弋するジャンク(黄海でないのが残念)、裾の割れた絹の服など上記3曲が描いている情景をバックに、東洋の香漂うミストレス、スージー・ウォンが堪能できます。