テクノポップ/アーティストインタヴュー

いまさらイスラエル~第4版(9ページ目)

札幌で80年代から活動する伝説のポエトリー・テクノポップ・バンド、いまさらイスラエル。怒涛のリリース第3弾『Jose in Paris, Jose in the desert』では、摩訶不思議な世界がニッキ・ニャッキ・ニョッキ。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

〔吉野〕 僕は、少なくとも、東京の当時の音楽シーンと比較して、札幌の場合、シーン全体で、音楽と美術、文芸とが濃厚に密着しており、そして個々の作品も、文芸的で非常に繊細な印象をうけるのですが、いかがですか?

〔三島〕 んーどうかな。87年以降はよく知らないけど、どちらかというとディティールのつめが甘いものばかりだったと思います。なんていうかな、若いからなにかするけど、自己評価が甘くて他には受け入れられないみたいな。いや、それは自分のことか! 何かいいものあったのかな、見逃したのかも。

そしてなにしろ、もう思い出せないんですよ。たぶん東京でも大阪でも似たような感じじゃないかと思うんですが、数が多ければ確率的に可能性があるし、対マスコミ関係でうまく上がってエスタブリッシュメントになれば作品は売れて、歴史にも残るでしょう。それは商業活動ですね。

札幌にはその可能性は少なかったと思います。キチンとやってる人たちは場所と関係なく上がってると思いますけどね。具体的にはわからないけど。誰がいるんだろ。

〔吉野〕 う~ん。「宝島」「フールズメイト」等、マスコミの功罪はあると思います。それが一番強調されてシーンがデフォルメされたのは東京と言うことかもしれません。
まあ、それはおいといて、僕はあの頃の札幌に あのようなバンドが集中して揃っていたか?その理由が良く解からないんです。大阪の同時期のバンドと比べて、明らかに違うと思います。

〔三島〕 そうですね、私も文芸部も黒百合会もやってましたよ。まあ興味があったんだな。作品も作れたから、発表するしかないでしょうね。札幌の特徴かどうかはわからないです。ただ環境が非常に美しいということはいえるでしょう。自然といってもいいかな。空気感とか光線の具合、風とか。きれいな人もたくさんいますね。

まあ他の土地はよく知らないし比べ様もないんですが。でもマンチェスターに行った時、さすがジョイ・ディビジョンの土地だと思いました。パリはマラルメの土地でした。引っ越したけど。土地の声が聞こえました。まあ思い込みと思い入れを確認しただけなんですが。札幌にもそんなところがあるのかもね。

タピエスを作った夏はとても美しい季節でした。ちょうど今くらいかな(註:インタヴューは2002年8月中旬に行われました。)。あの作品にはそんな空気感が録音されているというか、そのコレスポンダンスを作ったという感じです。フールズメイトで評価されたのは嬉しかったですね。知らないところで作品だけ聞いたり見たりしていいなと思ってた人がいたことは確かなんでしょう。希望があるのはそういうことですね。新しく何かやる気になったとかとかね。非常にマイノリティーで、勘違いとも言えますけど。

札幌で当時活動していた人でも昔話をしたがる人は少ないです。まして自分がなんとなくアーティストだったみたいな思い込みをもっている人も殆どいない。前向きなんです。まあ当然でしょうけどね。

〔吉野〕 今、「タピエス・ビューティフル」を聞きながら、質問を考えてるんです。で、同じ話を繰り返すようですが、この作品の持つ独特の清涼さ、湿度の低さは、やっぱり札幌独特だと思います。マンチェスターやグラスゴー、ロンドン、と、出てくる音は微妙に違いますよね。

〔三島〕 そうですね。私もペケペケエントロピーズを聴いた時、札幌の音だなと思ったことがあります。なにがそうなのかよくわからないですが、そう感じましたね。タピエスはどうかな。ボーカリストの素晴らしさの方が大きいと思いますね。絵に描いたような美しい人でした。そういう人がいたから出来たと思います。そこが基本ですね。
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