90年代の最重要ムーブメント「渋谷系」
V.A. 『bossa nova 1991: shibuya scene retrospective』 1988年の作品(DISC-1、1曲目)から2004年の作品(DISC-2、13曲目)まで「渋谷系」と呼ばれたアーティストの楽曲群からHIP HOP系を除いた選曲の2枚組コンピレーション |
それは90年代の初頭。HIP HOPを中心としたブラック・ミュージックの台頭や、The Stone Rosesを筆頭とするROCKバンドのダンス・ミュージックへの接近、テクノ・ブームやACID JAZZムーブメント等々、ポップ・ミュージックは全世界的に「踊れるもの」が中心になっていました。
そんな時代の流れに呼応した日本のアーティスト達がいっせいに芽吹いたのが「渋谷系」。同定義で「CLUB系」という呼び名もありましたっけ。大人の遊び場だったCLUBの敷居が低くなり、DJがBGM係から花形職業になったのもこのムーブメントのおかげといえるでしょう。
「渋谷系」という言葉の語源は諸説あるようですが、レコ屋の現場にいた者からみたその始まりは、次の作品の例のお店での展開が印象深いのです。
本格的な「渋谷系」のはじまり
LOVE TAMBOURINES 『Cherish Our Love』×渋谷HMV
LOVE TAMBOURINES 『Cherish Our Love』 LOVE TAMBOURINESはヴォーカリストELLIEとギタリスト斎藤圭市を中心としたグループ。人気アレンジャー宮川弾(みやかわだん)が在籍していたことも知られている |
そんな現場の立場からみてハッキリと「渋谷系」が確立されたのを目の当たりにした作品がこちら。LOVE TAMBOURINESのデビュー・マキシ・シングル 『Cherish Our Love』(1993)です。
発売日直後にたまたま立ち寄った渋谷HMVで、事は起きていた。当時渋谷HMVではポピュラーな日本のアーティストと、後に「渋谷系」と呼ばれるアーティスト達の作品が別々に展開されていました。例えばアルフィーは前者で小沢健二は後者、という感じです。
その後者のコーナーで大々的にプッシュされていたのが『Cherish Our Love』。ソウルはタフなタイプが好みの筆者にとってはヴォーカルも演奏も薄く感じられたこのマキシ・シングルが、目の前でどんどん売れていくのです。
「何かが起こりつつある」 - 今から思えば、それが本格的な「渋谷系」のはじまりだったわけです。
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Flipper's Guitarの巻
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