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I LOVE YOU~今、尾崎豊を想う(2ページ目)

この冬一番暖かなCMに使われた曲が中島美嘉の「I LOVE YOU」。オリジナルは尾崎豊、1983年の楽曲です。今回はこの曲の魅力を中心に、彼が亡くなった当日のレコ屋模様も振り返ってみました。

執筆者:常木 晴亮

1992年4月25日

13/71-THE BEST SELECTION
尾崎豊 『13/71-THE BEST SELECTION』
シングル曲を中心に収録したBESTアルバムで、タイトルは生前に残した全71曲から選ばれた13曲という意味。その71曲全てが入った"全部入り"BOX 『71/71』 も4月21日に発売されます
1992年4月25日 土曜日。当時CDショップにJ-POP担当の販売員として勤務していた私は、この日は休み。家で地味に洗濯機など回しておりますと電話が鳴りました。

「訃報」というものは何故か受話器を上げる前にわかるもので、誰が……と思いつつ出てみると同僚の声。「OZAKIが死んだって本当?」。とりあえず、発売されている全てのCDをある程度の数づつ注文しておくよう頼んで電話を切りました。

真偽のほどを確認して商品確保。なんだか自分が人の不幸につけ込むハイエナになったような気分になる瞬間ですが、CDショップの仕事なんてそんなものです。

携帯電話もインターネットも無い時代の事、テレビとラジオをつけっぱなしにして尾崎豊の所属事務所に電話。繋がらず。所属レコード会社は土曜日で休み。まだスキルもコネクションも無かった当時の私にできる事と言えば、この程度が限界でした。

もしや、と思い尾崎豊の熱狂的なファンだった友人に電話で問い合わせるも当然知らず、逆に絶句させてしまう始末。自分が同じような電話をもらったらどんな気持ちがするかを考えて後悔しても、後の祭りです(筆者はこれを後年、佐藤伸治(the Fishmans)が亡くなった時にメールで経験する事になります)。

結局、亡くなった事が確認出来たのは夜のニュース番組でのことでした。

1992年4月26日

そして翌日、出勤してみるとかなりの枚数でストックがあった尾崎豊のCDは瞬く間に完売してしまい、問い合わせもとても多かったのを憶えています。

中にはボロボロ泣きながら、CDがもう手に入らなくなるのか尋ねてくる女の子までいて。「大丈夫。もしそんな事になっていたら洋楽コーナーなんて成り立たない、ジミヘン※だって、ジョン・レノンだって生前からのファンだけじゃないでしょ」という、慰めになっているのかいないのかよくわからない対応をしたりして……。

※ジミヘン
Jimi Hendrix(1942~1970)。「Purple Haze(紫のけむり)」や「The Star-Spangled Banner(アメリカ国歌)」等で知られる、アメリカが生んだ伝説的ロック・ギタリスト。


Ja,Zoo
hide 『Ja,Zoo』
尾崎豊が「OZAKI」と呼ばれていたように、この人も「hideちゃん」という愛称で呼ばれる事が多かった。こちらは没後約半年をおいて発売された遺作(1998年11月)です。
こんなに大勢のファンが悲しむ姿を店頭で見るのは7年後、hide(X-Japan)が亡くなった時までありませんでした。季節が同じ頃だった事もあり、妙にオーバーラップした感覚があったのを今でも生々しく思い出す事ができます。

前述のように「I LOVE YOU」という楽曲が多くのアーティストによってカヴァーされる等、多くの人から親しまれ、愛され続けている尾崎豊。

ですが、個人的にはそこに歯がゆさを感じないでもありません。「Imagine」がJohn Lennonの代表曲であるのと同じように、なんだか「いい人」のイメージが先行している気がするのです。

どうにもならない事にあがいたり、もがいたり、悩んだりする様を隠さずにROCK'N ROLLしてみせたのも尾崎豊、だったので。
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